オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録⑦ 推薦状

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 今岡哲哉です。ここ数年は胃腸に元気がないのであまり食べなくなりましたが、渡航前にラーメン屋で真鯛のつけ麺を食べてきました。留学へのロードマップを見れば推薦状の概要は分かりますが、七回目となる本記事では私自身の体験談をもとに、推薦状をお願いする先生の選び方と、実際にお願いするうえでの注意点を紹介します。

図1. 真鯛らーめん麺魚@錦糸町

推薦状をお願いする

 推薦状に関する解説はロードマップで確認できますが、こちらの記事でも簡単に説明します。まず、推薦状とは、研究者に自らの能力をなるべく客観的に評価してもらう書類のことです。文量はおおむねA4・1-2枚程度です。必要な推薦状の数ですが、人文・社会科学分野でイギリスの修士課程に留学する場合、最低でも2通必要になります。しかし、私の受験校のなかで、オックスフォードだけは3通要求してきました。

 私が推薦状を書いていただく先生を探しはじめたのは、受験した2019年の6月のことでした。実際に先生方に推薦状を提出していただいたのは10月頃でしたので、必要になる3, 4ヶ月前に動き始めたことになりますが、このくらいの余裕をもっておいて正解だったと思います。推薦状をお願いする際には、事前に面談のアポを取り、その先生に合わせてA4・3ページほどの簡単な資料を作成しました。この資料では、まず出願校の一覧とスケジュールを提示し、これまでに履修した講義の内容と成績をまとめてから、最後に推薦状でのアピールになりそうな先生との関わりを並べました。加えて、参考資料として留学エージェントが作成した推薦状のサンプルを持参しました。研究者は基本的に多忙を極めているので、わざわざ自分のためにテイラーメイドの推薦状をお願いするならば、使われようが使われまいが、仕立てに必要な生地くらいは自分で用意するのがふさわしいです。

 推薦状をお願いする先生の選び方ですが、私は①付き合いが深いこと②自分の研究テーマに近いこと③複数の講義を履修し、なるべく良い成績を収めたことの3点を設定していました。この基準の中で最も重要だと考えているのは①です。その理由ですが、自分の研究能力や課外活動での実績、さらには人格を含めた総合的な評価を推薦状で伝えるには、まず付き合いの深い先生にお願いするのが最上だからです。その次に重要なのは②で、自分の研究テーマがいかに重要たりうるかを相談し、最終的に推薦状の形でアピールしていただくには、近い研究テーマを持っている先生にお願いすることが有効でしょう。最後に、自分の学業面での能力を推薦状で定量的に担保するべく、③の基準を設けていました。もちろん、1人の推薦者が複数の基準を満たすことはあるでしょうし、なるべくそういう先生にお願いするのが得策です。推薦者の学内・学会における肩書きを重視する方もいるとは思いますが、肩書きのある先生が周囲に居るかどうかは完全に自分の力が及ばない問題ですので、以上の3点を満たす先生に肩書きがあればなおよし、といった程度に考えたらよいと思います。

 推薦状をお願いしたのは、以下の3名の先生です。私は専修の外で社会学者・人類学者と深い関わりがなかったので、お願いしたのはいずれも京大文学部社会学専修の先生です。社会学専修は1学年30名程度に対して教員が6名と小規模ですので、それなりに真面目に過ごしていれば大概の先生とは関わることができます。先生方をジャッジするようで実に忍びないのですが、カッコ内に載せているのは、その先生にお願いした基準の番号です。

1人目: 指導教員(①, ②, ③)

 多くの方にとって、1通目の推薦状をお願いするのは指導教員になると思います。私もそうでした。3回生で社会学専修に配属されてから、学習に関係するあらゆる活動において、指導教員には本当に丁寧に面倒を見ていただきました。大学院生向けの特殊講義に加えていただいたり、学内のプレゼン・コンテストに応募する時には内容を確認していただいたり、読書会を立ち上げる際には参加者を集めるのに奔走していただいたりと、お世話になったことは枚挙に暇がありません。海外大学院への出願に際しても、様々な書類に的確なアドバイスをしていただきました。あまり受け持ちの講義が多くない先生でしたが、先生が生粋のフィールドワーカーということもあって、ほとんど全て受講していました。また、先生が文化人類学会で会長を務めていらしたことは、もしかしたら私の合否に一定の影響を及ぼしたかもしれません。

2人目: 同じ専修の教員(①, ③)

 2人目の推薦者は、専修の中で最初に面識を得た先生でした。2回生の頃、この先生の講義を複数受講したことで、私は何となく社会学に興味を持つようになりました。研究テーマは私とかなり違いますし、たくさん履修した講義でもそこまで良い成績はいただけませんでしたが、大学院に出願する前から何通かの推薦状を書いていただいたり、国際セミナーに招待していただいたりと親切にしていただきました。

3人目: 同じ専修の教員(③)

 3人目の推薦者は、専修で必修の講義を数コマ担当されていた先生でした。研究のテーマや手法は近くない先生でしたが、幸い必修の講義ではいずれも悪くない成績を取っていましたし、一度読書会のチューターを務めていただいたこともありました。

 私がオックスフォードに合格する上で非常に幸運だったのは、出願先のコース・ディレクターと面識のある先生が専修にいらっしゃったのが出願の直前に判明したことです。出願を1ヶ月後に控えた2019年9月、私はある先生が引率する海外研修に参加していました。朝、私はホテルの食事会場に早く向かい、出願先のコース・ディレクターが若い時に出版した単著を読んでいました。すると、テーブルの向かい側でパソコンを広げていらした先生が、背中を丸めて本の表紙を凝視してから、「これ、XXXの本だよな…?XXXってあのXXXだよな…?」とおっしゃいました。実は、先生は若い頃に同じ研究者のもとで研究していたので、出願先のコース・ディレクターと面識がありました。ただし、コース・ディレクターがオックスフォードの教授になっていたことをご存知なかったようで、「あいつも偉くなったなぁ」と笑っていらっしゃいました。その場で先生にお願いし、夜に現在の研究をまとめたパワーポイントをお見せしたところ、推薦状を引き受けていただくことになりました。そのため、当初お願いする予定だった先生にはお断りの連絡を差し上げることになりました。幸い、その先生はまだ推薦状を書き始めていらっしゃらなかったので、余分な労力をたくさん割いていただかずに済みました。

推薦状の注意点

 推薦状をお願いする際には2点注意すべきことがあります。第一に、推薦状の書き方は教員によって千差万別であることです。英語圏の大学院への進学者を定期的に輩出するコースなら、教員同士が推薦状の一般的な書き方を共有しているかもしれませんが、多くのコースでは教員の間で書き方が異なります。つまり、最初から自力で推薦状を書く教員もいれば、学生の下書きをもとに書く教員もいるし、学生との面談の内容を踏まえて書く教員もいれば、林文夫先生(経済学分野で海外大学院に出願する人は一度は読むであろうポストを貼りました)のように機械的に書く教員もいるということです。ですので、推薦状の提出が近くなってから、自分と教員との間で推薦状の書き方に関して齟齬が生まれないように、お願いする段階でその教員がどのように推薦状を書くのか確認しましょう。第二に、推薦状を書いていただく教員には礼儀正しくすることです。各大学には倫理規程があり、学生が教員にお礼の品物を渡すことは必ずしも推奨できませんので(京大はダメです)、とにかく行動で敬意を表しましょう。つまり、きちんと時間の余裕をもって推薦状をお願いし、必要な時にリマインドを送り、大学院に提出していただいたあとはすぐにお礼の連絡や挨拶をすることが大切です。

 以上、推薦状に関する記事でした。実際に推薦状を準備するのにかかるのは数ヶ月ほどですが、先生方に良い推薦状を書いていただける関係を築くまでには数年を要します。ですので、出願を検討されている方は学年に関係なく、今すぐにでも頑張ってください。応援しています!

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