JASSO 大学院学位取得型(給付)奨学金 書類作成・面接のコツ(2個目の修士課程)

はじめに

本記事では、私が二つ目の修士課程として復旦大学への留学を準備するにあたり、JASSOの大学院学位取得型(給付)給付金に合格した体験談を記す。まず、出願の経緯に触れてから、書類作成・面接対策に関して自分なりに意識した内容を記載し、最後に2個目の修士課程に出願する際にJASSOに出願する場合の参考情報を載せる。

私の軌跡

 まず、私がこの奨学金を受験するに至った経緯を記しておきたい。2021年夏にオックスフォードの修士課程を修了する前の同年初頭、2個目の修士を取るべく中国の復旦大学に出願し、修了とほとんど同時期に合格していた。詳細は後日別稿に改めたいと思っているが、復旦大学の出願と抱き合わせる形で中国政府奨学金にも出願しており、幸いにして双方に合格したため、比較的スムーズに新たな留学が実現する見込みだった。

しかし、結果として思わぬ事情でコロナ禍特有の事情に巻き込まれ、金銭的にも精神的にも難しい状況に陥ってしまった。その事情とは、2021年時点で中国は留学生に対する新規ビザ発給を停止しており、私は中国に入国が叶わなかったばかりでなく、中国政府奨学金の規定により、生活費が受給できなかったことである。中国政府奨学金は比較的条件の整った奨学金で、生活費、保険、宿舎が提供されるのだが、受給のためには現地に渡航して大学に登録手続を実施する必要があり、入国できない限り一銭も支給できない仕組みになっている。

 その結果、私は金銭面での支援を一切受けることができないまま、オンラインで復旦大学の講義を受ける必要が生じてしまった。折しもイギリスでの修士課程を終えたばかりで、奨学金を使っても足が出る程度の出費が生じていたから、当時の私には金銭的な余裕が毫もなかった。ある日、レストランの待ち合わせに向かう途中でATMに立ち寄って現金を引き下ろしたら、口座の残高が千円になっていて恐懼したのを克明に記憶している。

 さらに、復旦大学はオックスフォードと違ってオンライン授業の体制がほとんど整っておらず、対面授業をライブストリームで発信するという中途半端な形態を取っていたため、例えばマイクの問題から教員と対面出席の学生とのやり取りを聞き取ることができず、教育の質は到底満足できるものではなかった。そのため、2021年9月に入学してから1ヶ月も経たないうちに、事後的に入学延期の手続を取ることとなった。こうした時に、周囲には私の苦境を自己責任と言ってなじる人もおり(新自由主義の恐るべき身体化である!)、かなり精神的に厳しい状況に陥った。その後、中国は留学生に対する新規ビザの発行を再開したが、誰もが知っているように現地は依然として正常な状態から程遠く、私は今年の夏に再度入学を延期している。ただし、来年9月に中国がどのような状況になっているかは、誰にも見通せず、渡航を断念する可能性も否定できない。

 このように、私は切望している中国への渡航を待ち続けている状況にあるが、その過程でJASSOの給付型奨学金に合格できたのは喜ばしいことである。2021年9月に入学を延期したのち、同年中に本奨学金に応募し、年明けに面接を受けたあと、3月に合格の通知を受けた。オックスフォードに在籍していた時は、本奨学金に出願する余裕など到底なかったから、この合格も災い転じて福となすといったところである。個人的には、それなりに分かりやすく説得力のある出願書が作れたと思っているので、その過程をこのブログで共有したい。

出願書類の作成

 JASSOへの出願に際して、必要になるのは以下の書類である。

1. 願書(経歴、出願先、過去の成績等を整理した書類)

2. 過去の業績一覧・代表的論文の要約

3. 研究計画

4. 日本社会への貢献

5. 語学力証明

6. 学位・成績証明

7. 身分証明書

このうち、願書・証明書の類は淡々と事務的に作業すればよいだけなので、注力すべきは自分をアピールできる2〜4、とりわけ3の研究計画と4の日本社会への貢献である。両書類の作成時に意識すべき点はたったの二点で、一点目はJASSOの募集要項に合致したストーリーラインを立てること、二点目は自分の専門分野を専門外の人にも理解しやすいように伝えることである。以下、順を追って詳述する。

①ストーリーラインを立てる

 留学の意義はもちろん学問をすることにあり、学問をすることは即ち真理を探究することであって、本来的にはそれぞれの各人の留学に優劣を付けることができない。しかし、奨学金の選考は各人の留学の動機・内容に優劣を付ける行為であり、そこには何かしらの基準が設定されなければならない。したがって、奨学金を申請する際には、募集団体がいかなる人材を募集しているかを理解し、その内容に沿った願書を書くのが肝要だ、というのが私の意見である。

 JASSOに関しては、彼らの求めている人材像は非常に明快であり、なおかつ文科省傘下の組織であるから、選考過程は明文化された採点基準を厳守して候補者を評価するという、ごく官僚的になるものと想定される。それゆえ、募集要項はその採点基準を暗示するものとして、願書を作成するにあたって大変重要になる。ここに募集要項(p. 3)から抜粋しよう。

①留学期間終了後、大学や研究機関等において、日本の国際競争力の強化や国際社会への知的貢献に資する教育研究を行う意思を有する者


②留学期間終了後、国際機関等の中核的な職員として国際貢献に資する活動を行う意思を
有する者


③留学期間終了後、その他の機関において、①又は②に類する活動を行う意思を有する者

要するに、願書の作成に当たっては、以上の3種類のうち自分がどれを選ぶかという、ポケモン的な最初の選択をしなければならないのである。しかし、それさえ決めてしまえば、書類の内容は方向が定まるから、かえって作業は楽になる。

 私の場合、将来的には国際機関での勤務を目指しているから②を基軸にしているが、そこに①の要素も加えることで、自分の留学の価値をより強く訴えるという作戦に出た。すなわち、短期的にはアカデミアに貢献しつつも、長期的には国際機関職員として活躍を目指すことで、JASSOが募集する人材像に多角的にマッチする戦略を採用したのである。具体的には、アカデミアへの貢献に関しては、自分は国内の文脈でも国際的な文脈でも新しい学問的アプローチ(Migration Infrastructure)を導入して研究し、中国から日本へのIT労働者の移住過程・実態を明らかにすることを主張した。同時に、そのような新しい研究をすることで、将来的には国際機関職員として労働移住分野に取り組むに際して、未知かつ複雑な国際移動の現実を的確に分析し、よりよい実務的な対応を取れるようになる(ので、国際機関において有用な人材として生き残れるはずだ)という趣旨の書類を作った。このように、自分の留学が実務と学問の双方に貢献するものだと主張することは、研究分野が基礎・理論研究の場合は難しいかもしれないが、必ずしも難しいことではないと思う。

②専門外の人に研究内容を伝える

あらゆる奨学金の選考において通底する話だが、願書を作成するに当たって、自らと専門を異にする人々にも内容が通じる文章を書くことは肝要である。とりわけ、JASSOの選考にあたっては、書類をスクリーニングする段階で、自らの専門に背景知識がない人が書類を読む可能性は高いものと思われるから、いかに専門用語を織り込みつつも分かりやすい内容にするかが大切である。この作業は、自らの専門に没頭している人には馬鹿馬鹿しいもののように感じられるだろうが、他方で自らの研究の意義を平易な言葉で語れるようにする練習を積んでおくことは、国際機関職員としてドナーにプロポーザルを提出する時でも、あるいは研究者として各種グラントに申請する時でも必須のスキルとなるはずなので、JASSOへの出願も練習の好機と捉えた方がいいように思う。

今回の出願に際して私が取った行動は、経済学の博士課程に在籍する友人に書類を見てもらうというものだった。彼に頼んだ理由は、もちろん気軽に学問的な話できる間柄だからというのもあるが、お互いの専門が近すぎず遠すぎずの距離にあるというのが大きかった。それぞれの専門は社会科学という大枠を共有していはいるものの、私は人類学的な質的調査を、友人は経済学的な計量研究を専門としている。このように、お互いの専門に関する背景知識が何となくオーバーラップしているものの、それぞれのアプローチに関しては開きがあるという読者を持つと、自分の書類の説明が拙いところであったり、あるいは前提を自明視しているところであったりをきちんと可視化してもらえる。もちろん、このような友人に書類を見てもらう場合には、突っ込んだ専門的な議論に立ち入ることは難しいので、その点に関して不安であれば、まずは指導教員等に見てもらうのが得策だろう。

面接について

 面接に関して個別の質問を紹介することはできないが、所感を述べておく。JASSOの面接では、まず自分の志望動機・研究内容を留学先の使用言語で2分間きっちりスピーチする必要があり、それから複数の面接官から質問を受ける。質問の内容は、専門の内容に関するものもあれば、もう少し一般的に志望動機や将来の希望に関するものもあったが、恐らく最も有効な準備の方法は、志望動機書に記載した内容に関連する質問を想定しておくことである。なぜなら、面接官が志望者に対して事前に知りうる情報は、書類上に記載されていることのほかにないからである。実務的な環境での活躍を目指す人であれば、自分の研究がどのように実務に活かせるかであったり、学問の世界を極めたい人であれば、それが知の世界にどのように貢献するかであったりと、ごく当たり前の質問に対する明確な回答を最も優先して考えるのがよいだろう。

なお、個人的な印象では、面接より書類の方が重要であると感じた。明確な根拠は一切提示できないが、面接を受ける前にはもう志望者の大まかな順位が決まっており、面接を通じて最終的な合格者を調整しているように直感した。したがって、書類の段階で至極しっかりした内容のものを出しておくと、それなりに安心して面接が受けられるはずである。

参考: セカンド・マスターでJASSOに出願する場合

該当者が少ないはずなので末尾に参考として記載しておくが、2個目の修士を取るためにJASSOの支援を受けたい人のために、自分の体験を共有したい。私はすでにオックスフォードで移民研究の修士を取得していたことから、復旦大学の中国社会・公共政策修士課程に留学するためにJASSOに出願したことで、追加の作業が2点発生した。

第一に、一つ目と二つ目の修士課程の違いを説明する書類を作成しなければならなかった。JASSOにおいては、すでに修士号を取得済の者がもう一つの修士号を取得するために出願するには、両者の分野が違わなければならないと定めている(『2023年度申請の手引き〜Q&A・注意事項〜』Q. 20)。違いが明白な場合は追加の作業が発生しないのだが、そうではない場合、自由様式の別紙で説明する必要が生じる。

 私の場合、出願前にJASSOにメールで問い合わせたところ、別紙の作成が必要だと言われたので従った。そこに記載した内容は、一つ目の修士が移民研究を網羅的に学ぶコースだった一方、今回留学しようとしている二つ目の修士は中国社会を主眼に置いた地域研究のコースであるという違いと、両者での学びを組み合わせることによって、私は移民研究の理論・中国社会双方に知識を持つことができるし、中国移民をテーマとした本研究もより充実したものにできるというアピールとだった。

 第二に、私が一つ目の修士を取得したイギリスの成績制度はGPA形式ではないため、JASSOの出願基準を満たしていることを説明する必要が生じた。JASSOの説明によれば、成績を自らGPA形式に換算することは、明確な基準さえ提示できれば問題ないそうなのだが(『2023年度申請の手引き〜Q&A・注意事項〜』Q. 14)、他方で基準が不明瞭と認定されて足切りを受ける不安は拭えない。

私は修士の最終的な成績がPassだったため(Distinction: 70-, Merit: 65-69, Pass: 50-64, Fail: -49)の順、素点は60台前半)、自分で基準を設定してGPAに換算したうえで、最終的な成績の4割を決める修士論文の作成時に、指導教員が役割を放棄していたことも記載したが、それでも足切りの恐怖は拭えなかった(オックスフォードにはたったの5点分しか範囲がないMeritを設定しないでほしいものである)。そのため、オックスフォードのコース・ディレクターに、GPAが3.0以上である旨を記載した推薦状を僭越ながらお願いしたところ、快く引き受けてくださった。

以上のとおり、追加的な作業は発生するものの、私は書類の提出後に追加で説明を求められることも一切なかったので、隣接分野で2個目の修士を取りたい人にも積極的にJASSOへの申請を薦めたい。

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