ドイツの大学に雇用されながらPhD留学する話〜給料と働き方編②〜

給料と働き方①の続き


3. 働き方

さてここからは、働き方について触れたいと思います。ここで紹介するのはあくまで私の研究室・研究プロジェクトの話ですので、他の「Job型PhD課程」とは多かれ少なかれ相違があることにご注意ください。

3.1. 仕事(研究)内容

仕事といっても普通のPhD課程の学生とあまり変わらず、研究をして、その成果をセミナーや学会で報告し、最終的には論文として出版することを目指すというのがメインになります。異なる部分があるとすれば、①研究内容が雇用されている研究プロジェクトに沿うものでなければいけないことと、②定期的にあるプロジェクトのミーティングを含め、プロジェクトの運営に参加しなければいけないことです。またプロジェクトに雇用されてるので、「チェア採用」の場合と違い、ティーチングは原則義務付けられていません(やりたいと言えば基本的に歓迎されます)。取得すべき単位は少なく、自分の研究に役立ちそうな授業や、PhDやポスドク向けのサマースクールに適宜参加し、あくまでも自分の(=プロジェクトの)研究に集中することになります。

多くの教授は研究プロジェクトを掛け持ちしていて、各プロジェクトを中心的に回すのは「Job型PhD課程」の学生(またはポスドク)になっていることがほとんどです。例えば私は20ほどのサブプロジェクトからなる大規模な学際プロジェクトに参加しているのですが、様々な大学の学科や研究所に各サブプロジェクトの担当になっており、サブプロジェクトごとにPhD課程の学生が1人ずつ雇われています。したがって自分のサブプロジェクトの研究をするだけでなく、プロジェクトの運営(例えばサブプロジェクト間の情報共有や共同研究、進捗報告書の作成など)もする必要があり、この辺りは好き嫌いが分かれる部分かなと思います。

3.2. 勤務環境

フルタイムの契約なので平日は毎日働くことになっていて、取得できる休暇は年に30日ほど、(私の研究室の場合は)テレワークは全体の50%までというような決まりになっています。しかし出勤時間や退勤時間の決まりはなく、いつ誰がオフィス(研究室)に来ているかはほとんど気にかけられていない印象です。お昼ご飯に誘われる時に、今日あの人いないなくらいには思われるかもしれませんが。やはり研究が進んだかどうかが大事で、私の場合は毎週進捗を報告する場があるので、そこを目標にして研究を進めています。

仕事時間がきちんと決まっているわけではないので、出退勤の時間には国柄が現れてていて、観察しているとなかなか面白いです。ドイツ人の同僚の多くは9時には必ずオフィスに来て、6時前後にはきちんと帰る印象です。一方でラテン系の友人はほぼ毎日、長時間の昼休憩とティータイムを楽しんでいますし、多くの東アジア系の人はよく遅くまでオフィスに残っている気がします。

私はオフィス(研究室)が結構気に入っているので、金曜日をテレワークとして、週4日通っています。私の大学の場合、正規のPhD課程の学生はほぼ全員自分のオフィス(一人部屋か二人部屋)をもらえるのですが、オフィスメイトのPhD課程の学生が観葉植物を大量に持ち込み、素晴らしい空間を作ってくれています。また研究室からの眺めがよく、共用のコーヒーマシンもあり、おかげでオフィスで研究に集中することができています。

観葉植物が少なかった頃の研究室の様子。
ポスターは以前このオフィスにいた人が飾っていたもので、私の嗜好とは無関係です。

3.3. ビジネストリップ

私が現在の研究環境についてとても気に入っているのが、ビジネストリップ(出張?)をする際の出費をほぼ全額カバーしてくれる点です。フィールド調査や学会発表、サマースクールなどで国内外に赴く際は、自身の研究プロジェクトに関わる限りにおいては、様々な出費(交通費、宿泊費、3食分の食事代など)を補填してくれます。恐らくですが、ドイツの多くの大学も同様の仕組みになっているのではないかと思います(少なくともプロジェクト採用の場合)。

そして何よりも嬉しいのが、ビジネストリップの前後でプライベートの滞在が認められていることです。現に私は数日前までドイツのとある街で1週間の特別講義に参加していたのですが、それを利用してこの週末は日本人が多く住むデュッセルドルフという街に滞在して、日本食を堪能しています。

最後に副業については雇用契約の内容によるかと思いますが、私の研究室の場合は特に禁止されてはいません。実際に土日に畜産農家(豚)をしながら、PhD課程に在籍している人が隣の部屋にいて、「ハムができるまで」なるポスターを差し入れてくれたことがあります。そのポスターはオフィスの棚に丁寧にしまったままですが、今のところ畜産農家の彼とは良好な関係を保てています。

4. 終わりに

いかがだったでしょうか。「Job型PhD課程」がどんなものなのか、なんとなくイメージしていただけたのではないでしょうか。

最後にあくまで私見ですが、「Job型PhD課程」のメリット・デメリットを挙げてみようと思います。まずメリットしては、安定した収入が得られることと、職歴とプロジェクト運営の経験がつくこと、そして(ものによっては)予算の大きな研究プロジェクトに参加できることだと思っています。学生というよりプロジェクトの一員として見なされているため、プロポーザルが面白いと思ってもらえれば、研究予算を割いてフィールド実験やデータ収集を実施してくれることもあり、大きな魅力に感じています。

一方でデメリットとしては、研究内容の自由度が下がることと、必要な知識は自分で身につけなければいけないことだと思っています。特に後者については、例えば北米の経済学系のPhD課程ではコースワークがとても充実しており(またはしすぎており)、体系的な知識が自ずと身につく仕組みになっているように思います。一方で大陸ヨーロッパのPhD課程の場合は、研究をするための最低限の知識はすでに身についけている前提で、必要な知識は大学内外の授業を受講したり、独学したりするなどして適宜身につけなければいけない場合がほとんどです。現に前者はPhD取得までに5年前後かかることが多いのに対し、後者は3年から4年ほどです。

「Job型PhD課程」の良し悪しについては意見の分かれるところかと思いますが、私個人としては多くの人と関わりながら研究を進め、安定した収入を得ながら勉強(研究)させてもらえるという点で、多くの方におすすめしたいと思っています。なのでこの記事を通して、大陸ヨーロッパのPhD課程に少しでも関心を持っていただければ幸いです。次回(恐らく来週公開)は「Job型PhD課程」への応募方法について書こうと思うので、ぜひご覧ください。


余談ですが、ずいぶん前に本ブログに記事を投稿したことがあるのですが、その時の記事は私の青さがよく出ているので、読むのを控えていただければ幸いです。

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