ドイツの大学に雇用されながらPhD留学する話〜給料と働き方編①〜

初めまして、i_love_riceと申します。

現在はドイツの某大学で、雇われながらPhD留学をしています。今回から数回にわたって、主に大陸ヨーロッパで見られる「Job型PhD課程」について投稿していきますので、お付き合いいただければ幸いです。

「Job型PhD課程」というのは私の造語なのですが、PhD課程の学生として大学に在籍しつつ、大学や研究所の研究プロジェクトに数年間雇用される形で研究をし、その研究成果で学位(PhD)取得を目指すというものです。

第一回は、「Job型PhD課程」の待遇(給料と働き方)について書いていこうと思います。出願(応募)方法や研究内容については、第二回以降に譲りたいと思います。

1. はじめに

多くのドイツの大学では、PhD課程の学生は以下のいずれかの方法で生活をしています。①研究プロジェクトに雇用されて、プロジェクトの研究員としての給料をもらう(「プロジェクト採用」)、②教授などに直接雇用されて、RAやTAの対価として給料をもらう(「チェア採用」)、③奨学金などの外部資金または自己資金で生活をする(「自己資金」)。私の場合は①にあたり、3年半の契約でResearch Associate(研究員)として大学の研究プロジェクトに雇用されつつ、PhD課程に在籍しています。

私は社会科学系の学科に在籍しているのですが、プロジェクト採用、チェア採用、そして自己資金の学生の比率は、おおよそ1:3:2くらいの印象です。もちろんこの比率は大学や分野によって大きく異なり、例えば工学系の場合はプロジェクト採用の学生がかなり多い気がします。また待遇については、一般的にはプロジェクト採用の場合の方が、チェア採用の場合よりも良いと思います。

本記事では、プロジェクト採用でのPhD課程、すなわち「Job型PhD課程」についてとりあげていこうと思います。なぜ「Job型」と名付けたかというと、プロジェクト採用の場合、PhD課程の学生は(RAやTAとしてではなく)原則フルタイムの研究員として大学と正式な雇用契約を結び、Scientific Researcherとして就労ビザをもらって暮らすことになるためです。

ただしチェア採用の学生でも、給料が一定額以上なら就労ビザをもらうことになっています。なのでこのような場合も「Job型PhD課程」と呼ぶべきなのかもしれませんが、私自身がプロジェクト採用の学生であるため、主にプロジェクト採用にフォーカスして記事を書いていきます。なおチェア採用での留学ついては、以下の記事が大変参考になるので、ぜひご参照ください。

研究は好きだけど博士進学に迷いがある?ドイツに来ませんか?

2. 給料

やはり気になるのは、給料と働き方なのではないでしょうか。少なくとも私は、喫茶店でコーヒーを何杯も飲みながら作業をするような人間で、あまり研究室に閉じ込められたくないですし、コーヒー代をケチるようなこともしたくないので、応募の際は気になっていました。

まず給与額ですが、国や地域、研究分野、プロジェクト内容、そして研究経験によってだいぶ異なります。ドイツの場合だと、額面で月€2,000〜4,000くらい(€1=135円で換算すると27-54万円)でスタートして、そこから毎年およそ€300ずつ上がっていきます。それとクリスマス前にボーナスが出るので、私はそのボーナスを使って南国へ越冬しようと計画しています。

ドイツの給与体系について詳しくいうと、PhD課程の学生の給料は、TV-L 13という公共セクターの給与カテゴリーを基準に支払われることになっています。このカテゴリーの基本給が2022年10月時点で€4,074(1年目の場合)なのですが、「プロジェクト採用」や「チェア採用」の学生の場合、この給料の50〜100%が支払われます。前者に限って言えば、需要の高い工学系の学生の場合は75〜100%分(€3,055〜€4,074)が多い一方、社会科学系の学生の場合は65〜75%(€2,648〜€3,055)あたりがボリュームゾーンのようです。

参考:Public Service Salary Calculator

ちなみに私は農業経済学という需要があるようなないような学問をしているので、75%の給与レベルで、さらに1年間お金をもらって博士課程で研究をしていたこと(学振の特別研究員)が認められ、2年目の給与レベル(だいたい月€3,300ほど)からのスタートになりました。現在はなぜかプロジェクト予算が余っているらしく、ありがたいことに100%相当の給料に昇給しており、小心者の私は非常に張り切って研究に励んでいます。

お金の話ばかりだと心が荒んでしまうので、私のランニングコースの写真を貼りました。
冬の日照時間を犠牲にしている代わりに、夏は10時くらいまで明るいです。

注意しなければいけないのは、奨学金の場合と違い現地の大学と雇用契約を結んで働くことになるので、給料から社会保険料や年金といった現地の税金が天引きされるということです。ドイツは社会保障が手厚く、だいたい30~40%ほど差し引かれてしまい萎えます。先月の給与明細を見ると、健康保険、年金、失業保険、さらには教会税まで天引きされていました。授業料はほとんどかからないので、自由に使えるお金が毎月だいたい€1,330~2,400(1年目、50~100%の契約の場合)手元に残るイメージです。

この金額が多いのか少ないのかはよくわかりませんが、ドイツの多くの都市は家賃も含めて物価はそれほど高くないので、50%分の給料があればそれなりに暮らすことができ、それ以上あればその分だけ快適に暮らせるかと思います。ただしミュンヘンのように家賃の高い街であれば、(エリアにもよりますが)65%くらいはないと厳しいかもしれません。私は田舎町にいるので、それなりの家に住み、割高な日本米(sushi rice)をたまに買い、喫茶店で心置きなくコーヒーをおかわりできる生活を送ることができています。

最後に少し付け加えると、オランダ、スウェーデン、フランスなどの「Job型PhD課程」および「チェア採用のPhD課程」に在籍している学生と話をしたことががありますが、さすがにいくらもらっているかは聞けなかったものの、スウェーデンは平均的に待遇がいいということくらいは教えてもらいました。またチューリヒの大学の「Job型PhD課程」にも応募したことがあるのですが、その大学の場合、1年目は年間700万円くらいと決められていました。一見すると高いですが、チューリヒの物価を考えると、今の私の待遇と同等くらいかもしれません。


給料と働き方②に続く

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