アメリカ修士課程の体験記①:志望校の選定方法

こんにちは、南カリフォルニアの燦燦とした太陽を浴びながら記事を書いております、Arakiと申します。日本で学位取得後、米国大学院にて修士号取得、卒業後は同大学の博士課程に進学予定です。専門は土木工学の水文学・水資源工学という分野で、水災害について研究しています。理系ですが、よしみで寄稿させてもらっております。

本記事は、志望校の選定方法・情報源について執筆します。特に、博士課程進学についての情報コンテンツは充実してきているのですが、修士課程についてはまだまだ情報やサンプル数が少ないと思うので、同じように修士課程進学を視野に入れておられる方の参考になれば幸いです。

カリフォルニアの海岸:筆者撮影

志望校の選定で考えたことは、主に以下の3点です。米国・欧州(オランダ・英国)に出願した経験を元にしているので、以下、欧米である程度共通の事かと思います。

(1.1)修士or博士?

修士課程に出願するか、博士課程に出願するかは、自分の今のスペックや将来の希望をもとに考える必要があります。経験則ですが、合格に必要な条件は以下だと思っています。

博士課程 …
強力なコネ(例:指導教官の共同研究先、自分の研究インターン先であるなど)or 関連分野での研究業績

修士課程 …
{ 良い学業成績 or 関連分野での研究または実務実績 } and 特定の分野への強い興味

博士課程の出願では、自分の過去の履歴が、自分の研究能力を保証しなければいけません。そのため、コネや研究経験が重要になります。異なる分野での研究実績では弱いようです。海外大学院出願は学部4回生の冬に行いますが、その時にはまだ卒論の成果は出ていないでしょう。学部卒から直接博士課程に進学するには、学部1~3回生のうちに研究インターンを通して研究業績を積み上げている必要があります。

学部4回生で研究業績が無く、さらに所属研究室に協力なコネが無い場合は、修士課程で出すか、日本の修士課程で業績を積み上げてから海外の博士課程に出願するほうが合格確率は高いと思います。私の場合は研究業績が皆無だったので海外修士課程に出願しました。

情報源:学部生向けのインターンを探すには

(1.2) 修士or博士? 財政面からの検討

また、修士課程に出すか博士課程に出すかを考えるにあたって、財政面も考えなければなりません。博士課程と違って、修士課程は授業料や生活費など基本的に自腹です。修士進学費用を工面するには、2つ代表的なものがあります。

(A)日本の海外留学用の奨学金を獲得する

出願時に日本在住で年齢が若ければば、修士課程進学を支援してくれる奨学金団体の数は多いです。そのため、学部・修士卒で申請する人は、ある程度楽観的に考えて良いと思います。競争率は高いので、出願要件を満たすものはかたっぱしから出しましょう。また、出願する年の4月ぐらいから応募が始まるのでなるべくはやく準備しましょう。奨学金についてはぐぐったらいっぱい情報があると思うので、本記事では割愛します。

(B)修士課程でも財政面の援助がある大学を探す

例えば、米国の一部の州立大学はリサーチアシスタントの仕事を通して給料が得られる、ヨーロッパの一部のプログラムは第二外国語圏であるというディスアドバンテージを埋めるため?プログラムに関わる奨学金が米国より比較的多く存在している、などの抜け道があります。

(2)専門にしたい分野は何か?

修士博士どちらの課程に出願するにせよ、大学院では自分の専門分野をより細かく絞っていく必要があります。専門分野を絞ることで、志望校も絞りやすくなりますし、説得力のあるEssayを書くことができます。自分の興味のある専門分野を考えるのには早過ぎる事はないです。

自分の興味のある専門分野を絞るには、研究として取り組みたい問題や手法について考えるとよいです。例えば私の専門の水文学・水資源工学だと、以下が考える点として挙げられます。

  • なんの問題に焦点を当てたいのか?(人間活動や気候変動の洪水への影響は?どの地域の問題?)
  • その問題に取り組むにはどこがボトルネックか?水文現象のどの部分に焦点を当てることで、その問題を解決したいか、または、できるか?(地形の発達、河川の流量、蒸発散etc.)
  • どのようなアプローチが必要になるか?(水文学か水資源学か?)
  • そのアプローチ手法に納得はいくか?そのアプローチ手法は好きか?
  • その研究を行う事で自分が得られるスキルセットは何か?そのスキルセットは将来役に立ちそうか?(フィールドワークか、データ分析か、シミュレーションか、データセットの整備か?概念モデル・物理モデル・統計モデルを扱うか?)
  • 学問的に分野を横断的する必要があるか?(土壌学・社会学・経済学・気象学などとの横断)
水文学の分野の発展 Blöschl et al. (2019) https://doi.org/10.1080/02626667.2019.1620507

専門分野が絞れて来たら、その分野に強い大学を調べます。ただ、その分野に強い大学は存在したりしなかったり、強い先生が一か所に固まってたり散らばっていたり、様々です。分野横断であれば、両方の分野が強い大学に行くのも手です。

情報源:自分の興味のある分野を知るには、また、志望校を絞るには

  • 大学の先生に聞く
  • 論文を読む。興味のある論文の著者の所属研究室を調べる。
  • 学会やパネルのメンバーを調べてみる。気候変動を研究したい先輩は、IPCCのBoard member一覧から、師事したい先生を調べておられました。
  • 研究系の求職サイトのポスドクや博士課程学生の募集を見てみる。Job Descriptionから、どういう研究室が何をやっているかイメージつきやすい。水文学ではAGU学生会の記事About Hydrologyメーリングリストがある。

…といっても、百聞は一見に如かず、とりあえず興味のある分野の研究をなんでもいいのでしてみて、その経験から思索を広げていくのが一番やりやすいと思います。いかんせん私は学部4年まで研究をしたことがなかったので、専門分野の絞り込みに苦労しました。結局、色んな分野に顔を突っ込み色んな大学に出願してしまい、時間や労力を無駄にした気がします。

(3)修士号取得後、就職or博士課程進学?

大学院のプログラムは多様で、特に修士課程の場合はプログラムによってフォーカスが非常に異なります。プログラムの内容が自分の将来に資するかどうか見極める必要があります。

様々な修士・博士課程のプログラム (Purdue Universityの例) https://engineering.purdue.edu/ME/Graduate/Prospective/DegreesOffered

・就職希望の場合にチェックする点(知人らの留学を見ての聞きかじり)

就職前最後のまとまった勉強時間をとれる留学になるので、興味のある授業がたくさん取れそうかどうかを一番重視する人が多いです。また、その他チェックする点は以下です。現地就職を希望する場合には、大学のネームバリューがある程度大事になってくるかと思います。また、その国のビザや国籍取得要件は必ずチェックしましょう(アメリカは厳しく、カナダやニュージーランドは現地大学院からの修士号があれば取得は比較的簡単)。田舎よりも都市部にある大学にいるほうが、大学外での情報交換はしやすいでしょう。ちなみに、日本で就職を希望する場合だと、どの大学も全て「海外大学院」とくくられて、ネームバリューは問われないという話を聞きます。あとは、卒業生によるリレー講義が充実しているプログラムなども、就職希望の学生にはとても参考になるでしょう。

・博士課程進学の場合にチェックする点

修士課程で研究ができるかどうか確認しましょう。修士課程はコースベース、リサーチベースに二分されている場合が多く、前者だとほとんど研究らしい研究をすることなく卒業してしまいます。また、どのように指導教官が選べるか(入学前or後?ラボローテはある?)、研究テーマはどのように決まるのか(自分でテーマを設定できるのか、プロジェクトベースで雇用されるのか)、ラボの設備はどうか、指導教官の指導スタイル(ミーティングの頻度やサポートの厚さ)なども確認しましょう。

情報源:プログラムや研究室について知るためには

  • 大学のウェブサイト
  • 大学の先生や在学生からの情報(研究室の学生にビデオチャットとか頼んでもOK)
  • 実際に訪問する

最後に

学部4回生の1年間は、卒業研究・海外大学院出願・奨学金の申請面接・日本の大学院の院試(滑り止めとして受ける場合は)の4タスクを同時進行する非常にクレイジーな1年となると思います。強い心で頑張ってください。

私は学部4回生に進学する直前の3月に海外院出願を思い立ち、9か月程度で志望校を選定したり書類を急いで揃えたりしました。この経験から「前倒しからの準備が大事!!」と痛感したため、このブログでは志望校選定に必要なアクションアイテムについてつらつら書かせてもらいました。が、私が実行できていなかったことも多いです。準備に時間がかけられなかったとしても出願には間に合わせられる可能性は大いにあるので、あんまり悲観的にならずに参考程度に読んでもらえると幸いです。

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