はじめに
こんにちは、まつうらんどです。
ただいま1年目の後期の真っ只中であります。
少し時間がとれました(6連休)ので少しずつ書き溜めておいた1年目の振り返りを(2学期目の終わりは6月なので少しフライングですが)皆さんとシェアできればと思います。
台湾大学の農業経済学修士課程(National Taiwan University, Agricultural Economics International Master Program)に興味があるよ~という方の参考になれば幸いです。
そうでない方も「台湾飯うまそうだな~」と写真を楽しんでいただければ幸いです。
一言で表すと「忙しい」これに尽きます。
前期はまず大学院と現地の生活に慣れるのに注力し、後期は並行して研究所でリモートのリサーチアシスタントもやり始めたので、せかせかした日々を常に送っています。
前期と後期の間にあった1か月の休みも日本語の家庭教師・就活・修論準備をしていたら一瞬でした。
Twitterで見ている限り、イギリスの大学院に通われている方もかなり自己を追い込んでいらっしゃったので、「自分だけが忙しい!」というわけではないのですが、常に何かやらなきゃいけないことがあるという感じでした。
「自ら進んで大学院に進学しているのだから、多少のしんどさは気合いで乗り切るんや」
と自分を納得させてメンタルヘルスの管理をしていました。
あとは眠くて頭痛がしてきたら昼だろうが夜だろうが、寝るというのだけは徹底していました。
睡眠は最強です。

講義内容(カッコ内の日本語は直訳ではありません)
前期(9月中旬~翌1月中旬)(18週間)
18週まであり非常に長かったです。かつ3単位の講義は1回3時間なので進むスピードも多く、学部時代より負荷がかなりかかりました。
なお、修了に必要な要件は必修18単位・選択科目6単位・修士論文の3つなので、1年目で修士論文以外の要件ほとんど(選択科目残り1単位以外)は満たしたことになります。
Applied Microeconomics, 3 credits(ミクロ経済学・必修)
ミクロ経済学はnicholsonのテキストを利用していました。ミクロ経済学の主要トピックである消費者理論・生産者理論・競争均衡を学びました。
私は学部時代にミクロ経済学を履修していたので、基本的な情報が頭にある中で学んでいましたが、それがない学生もいて、彼らにとってはかなりしんどい講義であったと思います。
Nicholsonのテキストは、かの有名なMWGほど難解ではないのかなと感じました(先生の教え方がよかったというのもあると思います)。
Quantitative Methods, 3 credits(計量経済学・必修)
この講義では計量経済学の根幹を学びました。
テキストはMurrayのEconometrics: A modern introductionでした。
回帰分析、分散不均一、内生性、操作変数法、自己相関、パネルデータ分析などを学ぶのですが、一番初めにモンテカルロシミュレーションについて話を持ってきて、どのモデルを扱えばよいのかの倫理チックなお話をしていたのが印象的でした。
Gauss Markov Assumptionをまず基本として、上で述べたような手法はGauss Markov Assumptionのvariationだと述べていて、なるほどなと納得して聞いていました。

辛い中華!最高!
Agricultural Development, 3 credits(農業開発・必修)
Pai po leeという人が書いたAgricultural Developmentの本が教科書でした。全世界の現代の農業・環境問題について、教科書に沿って学生がプレゼンをしてそれについてディスカッションをするという形の講義でした。
農村発展の理論的な話は特に触れなかったです。
Agribusiness Management, 3 credtis(農業経営学・必修)
経営学の基礎の基礎というところを学びました。財務諸表の読み方を学び、financial statementの作りかた、marketing strategy、などを学びました。
期末課題としてビジネスプランを考えて、レポート・プレゼンがあったのですが講義で聞いたことを一通り盛り込んで作るというものでした。
後期(2月末~6月末)(15週間)
前学期の中間試験期間中に台湾大学の学生3人に悲劇が起こり、それを受け大学も負荷を減らす方向に舵を切りました。
結果として15週/学期になりました。
また今学期から必修以外に選択科目を取る余裕が出てきたので3つ選択科目を履修することにしました。
Advanced Macroeconomics, 3 credits(マクロ経済学・必修)
GordonのMacroeconomicsがテキストです。中間試験と期末試験があります。
マクロ経済学の初歩のところから成長理論(ソローモデルとか)まで包括的にカバーするようです。
Agricultural Policy Analysis, 3 credits(農業政策分析・必修)
ミクロ経済学理論を利用して、農業政策を理論的に分析する講義です。
簡単な講義というわけではありませんでしたが、非常に学びがいがあり、政策分析の理論を学ぶよい機会でした。
実証分析をする上で理論を理解していることの大事さは大学院に来てから何度もどの講義でも耳にしました。
試験とレポートの混合形式で評価されました。

Topics in Labor Economics: Empirical Methods and Applications, 2 credits(労働経済学;実証分析法とその応用・選択)
これは因果推論の講義です。
テキストはいろいろ指定されていましたが、おそらく最新かつ内容も充実しているMixtapeも含まれていました。
Randomized Control Trial・マッチング・Instrumental Variables ・Regression Discontinuity Design・機械学習・Difference in Difference ・Synthetic Control Methods ・Graphical Data Analysis
について一通り学びました。
さらにSTATAとRという統計プログラミングを学ぶ機会もあり、非常に充実した講義です。
個人的には地理データの分析についても学べたのがよかったです。
講義で体系的に地理データについて学ぶのは初めてでこの講義を履修してよかったと心から思いました。
また期末課題は因果推論の手法を用いてデータ分析を行い論文形式で提出するものであり、自らテーマを決め、データを集め、分析し、解釈するという実証分析を一通り行うことができる楽しいものです。
現在期末論文として、バングラデシュのデータを用いて国内の混乱(Conflict)と農業生産性(Agricultural productivity)の関係を分析しようかなと考えています。
(最終的に投稿論文のレベルまでもっていきたい。学会発表に照準合わせて進めなきゃなあ)
この講義が一番好き!!!

食べ放題2000円なんですよね。破格!
Typesetting Scientific Presentation, 1 credit(Latexによる科学プレゼン法・選択)
組み版であるLatexについて学ぶ集中講義です。
MS Wordという書類作成ソフトがありますが、LatexはWordより数式が書きやすく、かつ文章を整って出力しやすく、無料であるというのが特徴です。
ですがLatexは文章を作成するためにコードを覚える必要がありますし、なかなか大学の講義でLatex単体を扱うこともないので、この講義はLatexを基礎から理解するのに非常に役立ちました。
私も今まで見よう見まねでググりながらLatexを利用していたのでこの講義は短期集中ながらも満足度の高い講義です。
最後に実際にLatexを用いてプレゼンが課されます。
Independent Study, 2 credits(指導教官とのゼミ・選択)
本来は2年目の前期から登録するのですが、私は早期修了を目指すことにしたので1年目の後期から始めました。
就活をしていたこともあり、スイスイ修論準備が進まず、就活が落ち着くまで先生にはミーティングを2週に一回にしていただくなどいろいろと配慮いただきました。
私の指導教官はAmerican Journal of Agricultural Economicsという農業経済学のトップジャーナルにも通している先生で、意欲的に研究に取り組む先生に指導を仰ぎながら論文執筆ができて非常に充実しています。
学部でも大学院でも指導教官に恵まれて幸運に感謝です。
修論のテーマは気候変動に対する、農家の所得多様化とそれによる農家の厚生への影響にしようとしています。フィリピンのデータかバングラデシュのデータを利用しようかなと考えています。(こちらも最終的には学術雑誌に載せたいです。)
Family Economics, withdrawal(家族経済学・選択)
本来は履修すれば3単位の講義なのですが、他の講義の負荷と比較し、またちょっと精神的にも疲れてきたことから履修取り消しをして聴講に切り替えました。
教科書はEconmics of the FamilyというUniversity of Oxford, Nuffield Collegeの有名な先生が書いているようです。
この講義は家族の教育選択・同棲選択・子どもを持つかの選択・結婚から得られる利得など、家族形成をしていく上でのイベントそれぞれをミクロ経済学の理論に基づき解説していく講義です。
正直な話、ミクロ経済学理論がここまで応用経済学で使われているのを実感する講義は初めてだったので知的好奇心が刺激される非常に面白い講義でした。
あとは、結婚や同棲となるとわれわれにとって人生における大きな決断のうちの一つであるのでテーマとしても面白かったです。
「同棲は個人が利用できる実質の所得が増えるから経済学的にいいんだよ~」とか「同居して労働と家事を分担してそれぞれの得意分野を活かすことで得られるものが多くなるんだよ~」とかの話を聞くの”非常に勉強に”なりました
講義のトピックは非常におもしろかったのですが、期末テストの負荷・課題の負荷を考慮した結果、聴講することにしました。

この一年間で参加した講義は以上なのですが、講義に参加すること以外に、リサーチアシスタントとか台湾での生活、修了後の進路選択などについてまだ書き切れていていないのでそれは次回の記事で紹介させていただきます!
みなさんも是非疫病の流行が落ち着いたら台湾においしいご飯食べに来てね~!

台湾のパイナップルは芯まで食べられるんですよ!!!!
“国立台湾大学 農業経済学修士課程 留学体験記:1年目学術編” への1件のフィードバック