北京大学修士課程 大学院留学①: 燕京学堂(Yenching Academy)とは・出願までのきっかけ・道のり

初めまして、北京大学燕京学堂第1期生の松本です。

京都大学建築学科卒業後、同大学院を中退し、燕京学堂に進学しました。その後2017年に卒業し、現在に至るまで東京の不動産会社で都市開発の仕事をしています。ご縁があり、こちらのブログで燕京学堂について紹介させていただくことになりました。

2部構成で第1部は燕京学堂について、類似プログラムとの違い、留学のきっかけ、出願の流れについて紹介いたします。

◆燕京学堂とは

燕京学堂(以下、燕京)は2015年に北京大学で開校された全額奨学金の修士課程プログラムです。中国人学生と世界各国の留学生が共に授業を受け、一つ屋根の下で2年間過ごします。燕京の特徴をまとめると次の3点でしょうか。

①北京大の教育資源をフル活用

燕京の必須科目は主に英語で開講されますが、一部中国語のもあります。驚くべきは選択授業の自由度。担当教員の許可さえあれば北京大学の中のあらゆる授業を受講し、卒業単位に加算できます。(もちろん中国語が理解できる事が大前提となるので、なかなか辛かったですが…)。さらには、教授との交渉に成功さえすれば、学部学科を問わずあらゆる教授に論文の指導をお願いすることが可能という、実に驚きの制度です。

私の一週間

②同級生の国籍と専門が百人百様

私が属していた1期生は中国人学生24人·留学生約72人の、合計96人でした。うち、留学生はアルメニアからジンバブウェまで30ヶ国以上に渡り、日本人学生は私ともう1人の2人のみでした。留学生の地域別では欧州24、北米23、アジア16、他11人(一部二重国籍あり)です。あまりのダイバーシティゆえ、どこかで議論(特に国際問題や歴史認識問題)が始まると、収拾がつかずカオスになりがちです笑。

同級生は学部卒の22〜25歳で、就労経験がある人もいました。政治学、経済学、社会学を中心に文系出身が多いですが、私みたいに工学、物理、IT系を専攻した理系出身もちらほらいました。

③好待遇ゆえのレベルの高さ

大学から学費、渡航費、生活費が支給される好待遇から、燕京は巷では「中国版Rhodes」と言われ、選考倍率はかなり高いようです。(全体での合格率は僅か2-3%) 

特に中国人学生に至っては大海の一滴ではないでしょうか。北京大学はもちろん、復旦大学、武漢大学、南京大学、浙江大学など各地の名門大学で特に優秀な成績を収め、面接と選考用の短期キャンプでの熾烈な戦い潜り抜けた超エリート集団です。(見事に清華大学の卒業生はいませんでした。ライバル校に魂を売る学生はいないようです笑) 

留学生の出身校は多い順にHarvard、Oxford、Stanford、Cambridge、Chicago、Columbia…その他世界各国のトップ校が並びます。一方、国や地域によっては倍率はそれほど高くないところがあるのは事実です。その点では日本人は競争が激しい米英に比べ相対的に入りやすいかと思います。なお、後代には日本人不在の代もありましたが、5期生は日本人が5人もいるようなので、近年徐々に日本でも知名度が高くなってきています。日本人含め、毎年国別の人数はバラバラなので厳密な国籍別のクォータはないのでしょう。

初めはそんな頭のキレる同級生に囲まれながら生活していると、自信を無くしたり焦ったりすることもありましたが、2年間一緒に暮らすと(良い意味で)皆バカなんだなと気付きますので、心配しなくても大丈夫です笑。

◆Schwarzhmanとの違い

清華大学にもSchwarzman Scholars(以下、SS)という、燕京に似たような全額奨学金の修士プログラムが2016年に開講されています。この頃、優秀な留学生を呼び込んで大学の知名度を上げるべき!といった動きが国レベルであったようです。

燕京はBXAIを立ち上げ日本にも所縁のある香港企業家が、SSは米国企業家が中心となって開設資本を提供しています。必然的に前者は東アジア色、後者は米国色が強くなっています。留学生の米国人比率でいえば、一期生はSSは約4割(51/108)なのに対し、燕京は約2割(21/96)です。

燕京とSSの違いは校舎と寮にもみられます。燕京の教室は、静园という清王朝の御苑の跡地にあります。元々は御苑にある歴史的な建築物を撤去し、燕京の為に巨大な寮を兼ねた専用校舎を建設する計画だったようですが、北京大学の学生が反対運動を起こし、計画は中止になったようです。運動の激化で危うく燕京自体が無くなりかけたようですが、最終的には教室は旧建築を残したまま内部を改装し、新旧折衷の中国風の美しい校舎となっています。(個人的には大好きな校舎です)また、大人数用の大講堂は別途体育館を改修して作られています。寮は校舎から歩いて3分程の場所にあり、燕京以外の学生も入寮しています。

静园(燕京校舎):筆者撮影
筆者の寮の写真

SSに知り合いがいて、SSの専用校舎兼寮にも遊びに行ったことがありますが、外からは中がほぼ見えない要塞のようです。内部の作りは豪華絢爛で、食堂·図書館·バー·シアター等も内包されているため、一歩も外に出ずに過ごせてしまいます(本当に籠る人は少ないかと思いますが)。校舎専用のインターネット接続があったりと、設備投資や資金の潤沢さでは完全にSSに軍配が上がりますが、大学との一体感はあまり感じられませんので、好みは別れるかと思います。

大学全体でいえば、もともと北京大学は文系、清華大学は理系が強い大学です。建築設計や構造力学なら清華、都市計画やランドスケープなら北京大学と、建築分野の中でも強みに若干の棲み分けがあるようです。また、北京大学は比較的政権に異を唱える事を恐れないリベラリストが多く、校風も自由な雰囲気なので、その点やや京大っぽいといえます。補足ですが、習近平主席は清華大学、李克強首相は北京大学出身なので、近年は清華大学の方が大局的には勢いは良いですね。

燕京とSS間では何かと交流の機会があり、非公式ながら共通のWeChatグループもあります。どちらも優秀な学生が集まっていることは間違いないので、自身の専攻や校風にあった方を選ぶことをオススメします。

◆中国留学~燕京進学のきっかけ

大学時にバックパッカーとして十数ヶ国を旅し、その中で中国が一番面白いと思ったことが中国に興味を持ったきっかけです。学部2回生の時、上海・蘇州・南京・天津・北京を約2週間かけて一人鉄道で巡りました。当時は你好くらいしか言えなかったので、今考えるとなかなか無謀でしたね…それまでは中華料理も大して好きではなかったのですが、到着早々に道端の屋台の生煎包、麻辣烫、羊肉串儿…何もかもが美味いことに衝撃を覚え、今まで日本で食べていたのが中華でなかったことに気付きます。旅で常時金欠だった私は、ネットで知り合った人の家に泊まらせてもらいましたが、初日の晩飯からお店を5軒ハシゴするという、ホストの驚異の熱烈さに感銘を受けました。かくして、知れば知るほどもっと知りたくなる、そんなお隣の大国中国の底しれぬ謎と魅力にいつしか惹き込まれていってしまったのです…

学部4回生の時、同じ研究室の中国人留学生の先輩に声を掛けられ、私は卒業論文で四川地震後の都市復興計画について研究することになりました。先輩は北京大学卒業後、京大へ博士号を取りに来ていて、四川省の山岳部にある農村の都市防災計画を研究していました。私は先輩と一緒に科研費を獲得し、四川大学との合同研究として四川省で1ヶ月間現地調査を行いました。

四川研究はそれなりにまとまりましたが(概要はこちら)、インタビューを行っても翻訳越しでしかやり取りできず、地元の人々が日本人学生を相手に情報を開示するわけもなく、焦れったい心境で論文執筆に暮れる中、大学の掲示板で燕京学堂の1期生募集を目にします。中国語初心者の私でも北京大学に行ける、しかも全額奨学金。前例のない謎に包まれたプログラムでしたが、まさに千載一遇のチャンス。私は迷わず応募しました。

◆Applicationについて

学部の成績は決して良い方ではなく、再履修に追われていた自分がなぜ合格できたのかは不思議ですが、理由は主に下記の3点かと思います。応募を検討の方は参考にしていただければと思います。

 ①「強い」推薦者

どの大学院進学でも共通かと思いますが、説得力のある推薦状をもらうことが何より重要なのではないでしょうか。私は四川研究でお世話になった四川大学防災研究所長に推薦状をいただけたことが合格の決め手となったと感じています。学部の入試では学力が重要ですが、院(海外)ではぶっちゃけコネの方が重要です。関心がある分野の先生には、研究に対する熱意をしっかりと伝えましょう。

 ②中国関連の研究実績

面接では「本気で中国で学びたいのか」とその理由を深掘りされます。既に中国関連の研究実績があれば話の展開は容易です。まだ間に合うなら、卒業論文で中国関連の内容を選ぶことは選考に大きく有利に働くと思います。間に合わない方も、CVに少しでも中国関連の内容が書けるよう、インターンや個別研究を行う事をお勧めします。

 ③英語力

燕京は英語中心のカリキュラムですので、英語力があることは前提となります。たまにTOEFLが要件の点数(iBT 100以上)に達していない留学生もいましたが、例外なく中国語がある程度できる学生でした。もちろん、英中両方ができることに越したことは無いですが、私は中国語は応募時にHSK3~4級程度しかありませんでした。

(補足)

燕京にはPartner University(日本では京大・早稲田)とCooperating University(日本では東大・ICU)の制度があります。前者は学内選考に残ったものだけが推薦されるので、選考ステップが1つ増えますが、その分2次の合格率が上がるものと推測されます。日本人の後輩達はこの4校の卒業生がほとんどですが、4校以外でも合格のチャンスは十分あるかと思います。前学長は「日本人をもっと取りたい!」と切望していましたし、選考委員はしっかりCVを読み込んでくれるので、4校以外の方も是非挑戦してみてください。

来年入学の募集締切は12/4です(あと1週間!)

本投稿は第2部(学生生活・研究・就活などについて)も予定していますが、応募を検討している方々に少しでも参考になればと、まずは第1部を公開します。

ご覧いただきありがとうございました!

※入学要綱やカリキュラムについての最新情報は各自公式HPまたはAdmissions Officeへお問い合わせ願います。
北京大学の簡単な概要についてはこちらの記事からご覧いただけます

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