大学在学中にIELTS Overall 8.0を取得する方法(前編)—— オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録⑥語学試験

記事一覧: 第1回(自己紹介・出願の記録)第2回(志望校の選定基準・出願のスケジュール)第3回(CV・SoP)第4回(研究計画書)第5回(ライティング・サンプル)、第6回(前編=本記事)、(後編)第7回(推薦状)

 今岡哲哉です。今日は散髪のために久々に出かけましたが、あまりの暑さに軽い熱中症になってダウンしてしまいました。長い「自粛」生活の中で癖のある髪が大分伸びてしまい、もみあげが梅雨の湿気を存分に吸ってイイダコの足みたいにカールしていましたが、美容師さんがバリカンで刈り上げてくれたので今はサッパリしています。さて、イギリス大学院修士課程の受験記として細々と続けている本連載ですが、今回はオックスフォード・ケンブリッジ大学院が要求するIELTSのスコア要件を満たそうとするうち、最終的には京大在学中にIELTS Overall 8.0を取得した方法をご紹介します。

 記事のテーマを踏まえると、必ずしも大学院留学を検討している方だけに読者を絞る必要もないと判断しましたので、恥を忍んで浅ましいタイトルを提灯にしています。以下の記事では、私がIELTSでオックスフォードへの進学に必要なスコアを取るのに苦労した体験談を綴っています。記事は前編と後編の二本立てにする予定です。前編となる本記事では、大学3年の終わりから大学4年の終わりという比較的短いスパンで点数を伸ばした方法を紹介します。後編では、大学1年から4年間かけて、長期的な観点で英語力の向上に役立った経験を紹介します。

 本記事はかなり長く、最初に社会科学分野でイギリス修士課程を受験する際に必要な英語試験のスコアを整理したあとは、IELTSの対策に役立った教材を紹介しつつ、個人的な苦闘の歴史を時系列で綴っています。事前に要点を整理してお伝えすると、まず海外大学院の受験を検討している方には、大学3年の終わりまでに必要なスコアを取得することが理想的です。そして、IELTSを受験する場合、ペーパー形式ではなくコンピューター形式の方が良い点数を取りやすいです。以下、本編に入ります。

社会科学分野での修士留学に必要なスコア

 社会科学分野でイギリスの修士課程に進学する場合、必要となるスコアには概ね3段階の目安があります。すなわち、①IELTS Overall 7.5/TOEFL iBT 110点以上、②IELTS Overall 7.0/TOEFL iBT 100点以上、③IELTS Overall 6.5以上/TOEFL iBT 90点以上の3段階です。また、多くの大学院では試験の各セクションにも必要な点数を設けています。IELTSの場合、Overallスコアから0.5を引いたものが各セクションでも必要になることが多いです。社会学・人類学のコースを例に取ると、①のスコアが必要になるのはオックスフォード・ケンブリッジ・UCL、②はLSE、③はバーミンガムなどです。すなわち、①や②の基準を採用する大学院に合格するためには、英語を日常的に使う環境で暮らした経験が長くない限り、漫然と受験したところで取得できないスコアが必要になります。この基準には社会科学の領域間でも差があって、一般的に経済学は社会学・人類学・政治学より少し要件が易しいといわれています。

 多くの大学院では出願時に語学要件を満たしている必要はありませんが、個人的には大学3年の終わりまでに必要なスコアを取得することを推奨します。その理由は複数あります。まず、4年になると卒業研究や大学院の出願作業が始まり、語学試験の対策に費やす時間は大幅に限られてしまうからです。続いて、奨学金によっては、大学院が出願時に語学要件の充足を要求していなくても、独自の語学要件を設定している場合があるからです。最後に、語学要件を満たさないまま大学院に合格すると、特定の期日までにスコアを更新しなければならないプレッシャーが生じるためです。期日までにスコアを更新できない場合、安くはないお金を払って大学院の事前語学研修(Pre-sessional Course)を受けることになり、そこでも必要なスコアが取得できなければ合格が取り消しになる場合があります。要するに、早い時期に語学試験で必要なスコアを取得しておかないと、いずれ実務的・精神的・金銭的な問題が降りかかってくる危険があるということです。

IELTSの点数を伸ばす短期的戦略

試験日学年テスト形式OverallListeningReadingWritingSpeaking
2020/2/64年Comptuter8.08.58.57.07.0
2020/2/14年Paper8.09.08.07.56.0
2019/5/184年Paper7.58.08.06.07.5
2019/3/23年Paper7.57.59.06.56.5
表1. 暗闘の歴史: 4回のIELTS受験

 ここからは、今まさに推奨したことの全くの反例として、私が必要なスコアをIELTSで取得するのに苦労した体験談と、一年間で点数を伸ばすのに採用した戦略をご紹介します。表1には、大学3年の終わりに初めてIELTSを受験し、4年の1月にオックスフォードに条件付き合格を貰ってから、2月にやっと必要なスコアであるOverall 7.5+各セクション7.0以上を取得できるまで、4回も受験する羽目に陥った際のスコアを整理しています。

 話の前提として、IELTSを受験する前の英語力について説明します。私は全くの千葉生まれ千葉育ちですが、高校1年の時にアメリカ・ミシガン州の公立高校に半年ほど交換留学していたので、一般的な京大生よりは少し英語ができる部類に入りました。参考までに、大学1年の6月に受験したTOEFL iBTでは91点(L:24 R:28 W:21 S:18)を取得していますが、リーディングのスコアが比較的良く、リスニングもまあ悪くはないという程度で、スピーキングとライティングに関しては特に留学の効果が出ていません。TOEFLを受験してからは、毎回2.5万円ほどの大金を払って語学試験を受け直すのが億劫になってしまい、3年が終わる3月に初めてIELTSを受けるまでは何の語学試験も受験しませんでした。最初のIELTSのスコアは、表1にも記載しているとおり、Overall 7.5 (L:7.5 R:9.0 W:6.5 S:6.5)でした。なお、妥当かどうかは怪しいですが、TOEFLを実施しているETSによると、このスコアはTOEFL iBTで102-109点に相当するそうです。なので、大学1年前期から大学3年後期までの間に、少しずつ英語の運用力が向上していたことになります。こうした長期的な語学力の養成方法に関しては、後編でお伝えする予定です。

画像1. 交換留学中・傲岸不遜・16の私

 なお、私がTOEFLではなくIELTSを受験したのは、後者の方が簡単に思えたからです。まず、TOEFLはコンピューター形式の試験なので、スピーキングでも機械に向かって音声を吹き込む必要があります。一方、IELTSにはペーパー形式とコンピューター形式の2つがありますが、いずれにせよスピーキングではネイティブ・スピーカーの試験官と一対一で会話することになります。私は会話をする時に一方的ではなく双方向的である方が滑らかに話せるので、IELTSの方が向いていると感じました。加えて、リーディングの文章とリスニングの音声もIELTSの方が圧倒的に易しいです。ただし、ライティングに関しては、TOEFLはコンピューター上でタイピングできるのに対し、ペーパー形式でIELTSを受験する場合は一定の文量を手書きする必要があるので非常に疲れます。

スピーキング対策

 大学3年終わりの3月に初めてIELTSを受験したとき、Overallの7.5点自体はオックスフォードの要求を満たしており、ライティングとスピーキングのスコアが6.5点と、それぞれで必要な7.0点に0.5点不足していたため、再び4年の5月に受験することになります。試験対策の期間がわずか2ヶ月半しかなかったため、私は最も苦手意識の強いスピーキングの対策に全力を傾けました。英会話スクールに大金を払う余裕は無かったので、独学で対策することになりました。

 金欠に喘ぐ私のスピーキング練習法は非常に昭和的で、参考書の例文を文法ミスがなくなるまで執拗に暗唱するというものでした。確実に効果はありましたが、大学の講義が終わって比叡山の麓にある古い学生マンションの一室に帰り、山間部に特有の濃い夕闇が広がりはじめる時間に、文法ミスを犯さなくなるまで一人でずっと英語を暗唱していると、孤独と苛立ちから次第に精神が崩壊しそうになりました。その際に使った参考書は2冊で、1冊目はテイエス企画から出ている鈴木瑛子(2016)『スピーキング・ライティング攻略のための TOEFL iBT必修フレーズ100』です。この参考書には、アカデミックなスピーキングとライティングに活用できるフレーズが100篇載っています。タイトルにはTOEFL iBTと書いてありますが、別にIELTSを受けるにしても、あるいは大学で英語の課題に取り組むにしても、本書には汎用性の高いフレーズが揃っています。また、ネイティブ・スピーカーの音声を収録したCDが付属しているので、例文の暗唱に取りかかる前に、CDの音声を繰り返す形で口慣らしができました。

 2冊目の参考書は、同じくテイエス企画から出ている川端淳司ほか(2017)『パーフェクト攻略IELTSスピーキング』です。1冊目は有用でしたが、IELTSのスピーキングには直接関連していなかったため、そこに特化した2冊目を購入することになりました。この参考書では、最初にスピーキング試験の全体像に触れてから、練習問題を通じてパートごとに対策を紹介し、最後に実戦問題を数回分載せています。私はまず練習問題の模範解答を暗唱できるようにして、それから自分なりの回答を試しに何度か喋って内容が固まってきたら、文法ミスを犯さなくなるまで繰り返し口に出すようにしました。なお、練習問題の模範解答は留学に必要な点数を取るのに十分なレベルを大幅に超過しています。そのため、私はもっぱらスピーキングでの文法ミスを減らし、回答する際の大まかな感覚を掴むための素材として模範回答を活用しました。

 以上の対策を続けた結果、精神を鰹節のように削った甲斐もあって、2度目のIELTS受験ではスピーキングで7.5点を取ることができました。ただし、この結果には練習の成果が純粋に反映されているわけではなく、試験官との相性が初回より格段と良かったことも影響しています。スピーキングもコンピューターで自動採点するTOEFLに比べて、対面形式のIELTSでは点数が非常に変動しやすいのです。

ライティングの鬼門をくぐる

 2回目のIELTS受験において、スピーキングでは必要な点数を取得できたものの、ライティングでは初回の6.5点よりも0.5点低い6.0点を叩き出してしまいました。実は日本人の書いた参考書でライティングの対策にも自力で取り組んでいましたが、スピーキングに比べてライティングは得意だという謎の自己認識があったためか、あまり時間をかけていませんでした。

 2回目の試験結果が出た6月初旬頃には、ケンブリッジの研究計画書を書くのに忙しくなってしまったので、再びIELTSの対策に取り掛かることができたのは翌年1月中旬のことでした。夏までに必要なスコアをIELTSで取得する条件で年初にオックスフォードに合格しましたが、その後はフィールドワークをしていた芝園団地で退居の作業を進めていたため、大学院受験が一段落した安心感も加わってか、しばらくIELTS対策に乗り出せない状態に陥ってしまいました。しかし、合格した財団の奨学金を受給するには、3月末までに無条件合格を取得する必要がありました。そのため、私は1月中旬から約2ヶ月半以内にライティングで7.0以上を取得しなければ、留学が潰えてしまう危険に襲われたのです!

 そこで、やはり高額の英語教室には通えない私が藁にもすがる思いで購入したのが、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」がセールで投げ売りしていた、“The IELTS Teacher”なるユーザーのライティング・コースです。Udemyは高価な教材をいつも大幅に値引きしてお得に見せかけていますが、私が購入した時は普段よりさらに値引きしていたので、定価約1.2万のコースを1200円で販売していました。IELTSのライティングは2つのパートに分かれており、それに応じてライティング・コースも2つあったので、私は合計で2,400円を支払いました。講師はイギリス人のネイティブ・スピーカーで、長年ノンネイティブ・スピーカーにIELTSの対策を教えてきた経験があるらしいです。

 この教材に対する私の評価は、IELTSのライティングで必要な点数を取るという、限定的な目的を達成するには非常に有用であるというものです。この教材では、高得点が狙える答案が非常に機械的に作成できる方法を教えてくれます。その方法とは、ライティングの問題の種類に対応する答案のフォーマットが存在するので、そのフォーマットさえ決定してしまえば、答案の各パラグラフから一文一文に至るまで内容を自動的に決定できるというものです。すなわち、回答者が想像性を働かせる余地をフォーマットによって徹底的に排除することで、IELTSのライティングという限られた問題には最適な答えを導けるようになるというものです。

 逆にいえば、この教材でIELTSのライティングに対策ができたとしても、アカデミック・ライティングの能力には何の変化も生じません。また、この教材を提供している”The IELTS Teacher”は自社のサイトも運用しており、有料サービスでは講師がライティングの答案を2日以内に採点してくれますが、あまりお薦めできません。その理由ですが、採点基準が回答のフォーマットと答案の一致度を測ることに焦点を当ててしまっているので、実際のIELTSで同じ答案を書いても講師の採点結果と同じ点数が出そうになかったからです。

最後の関門: 試験形式

 こうして大慌てで対策を済ませて2月1日に3回目のIELTSを受験した結果は、Overall は過去最高の8.0点を記録し、リスニング、リーディング、ライティングではそれぞれ9.0点、8.0点、7.5点を取ることができました。ライティングの試験時間が終了した時、私はIELTSからの解放を確信していました———が、何とスピーキングで6.0点を取ってしまいました。

 その理由は、IELTSの不親切な運営方式にあります。IELTSでは、筆記試験(リーディング、リスニング、スピーキング)とスピーキング試験の2つにパートが分かれています。前者と後者では時間帯が異なり、時には別の会場に移動する必要も生じます。そのため、IELTSを受験する際には、筆記試験とスピーキング試験を別々の日に受験する2day形式と、午前中に筆記試験、午後にスピーキング試験を一気呵成に受験できる1day形式があります。私は試験を2日間も受けるのが苦痛で仕方なかったので、2回目以降の受験では1day形式を選びつづけていました。ですが、1day形式を選択した場合、必ず朝8時に筆記試験の会場に入室する必要があるにも関わらず、午後のスピーキングの試験時間は毎回変動し、遅い時だと午後6時近くになってしまいます。私が3回目に受験した時は折しも寒さの厳しい2月でしたが、スピーキングの試験時間は午後5時でした。ただでさえ一日の中でも特に寒い朝に会場に足を運んだのに、お昼に筆記試験が終わったあと、カフェで足元を冷やしながら午後5時までずっと待機することを強いられているうちに、発熱してすっかり体調を崩してしまいました。そのため、自分でも何を言っているのかよく分からない状態でスピーキングを受験することになり、その時に試験官の浮かべていた訝しげな表情が強く印象に残っています。

 この問題は、コンピューター形式のIELTSを受験することで綺麗に解決しました。近年、IELTSでは従来のペーパー形式に加えてコンピューター形式の試験を導入し、日本でも2019年3月27日から実施されています(1)。試験の形式によって運営主体も異なり、ペーパー形式は日本英語検定協会が実施しているのに対し、コンピューター形式はイギリスの公的機関であるブリティッシュ・カウンシルが実施しています。コンピューター形式では、スピーキング・パートだけは従来通りの面接を実施しますが、あとのパートは全てコンピューター上です。この形式には数多くのメリットがあります。まず、何よりライティングの答案がキーボードで入力できるにも関わらず、試験時間はペーパー形式と全く同じなので、時間にかなりの余裕ができます。加えて、会場のブリティッシュ・カウンシルは収容人数がさほど大きくないため、スピーキングと筆記試験の間に大幅な待機時間が発生することもなく、長時間待機による体調不良という問題も発生しません。さらに、ペーパー形式では試験日が週末に限られていて満席になっていることも多いのに対し、コンピューター形式ではほぼ毎日受験することが可能で、満席になっている日も少ないです。他にも、ペーパー形式では結果の閲覧に2週間もかかるのに対し、コンピューター形式では5-7日と短いです。また、蛇足ですが、ブリティッシュ・カウンシルの試験官はスピーキングの面接に非常に慣れているようで、受験者からよりよい回答を引き出そうとしてくれる印象を受けました。以上のメリットのおかげで、3回目の受験日の1週間後に受験した4回目のIELTSでは、寒さによる体調不良にも苛まれることなく、Overall 8.0点、リスニング・リーディング 8.5点、ライティング・スピーキング 7.0点を取得することができたので、晴れてオックスフォードへの進学がより現実に近づきました。ただし、今のところコンピューター形式の会場は東京のブリティッシュ・カウンシルのみなので、受験のしやすさには地理的な不公平があることを指摘しなければなりません。

 以上、長々とお付き合いくださりありがとうございました。後編の記事では、大学生活を通じて英語力を向上させる長期的なアドバイスを紹介する予定です。ぜひご覧になってください。

 

(1)https://www.britishcouncil.jp/exam/ielts/which-test/computer-delivered-ielts (2020年6月19日)

 

大学在学中にIELTS Overall 8.0を取得する方法(前編)—— オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録⑥語学試験” への2件のフィードバック

コメントを残す