オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録⑤ ライティング・サンプル

 

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 今岡哲哉です。前回の記事を書いてから大分空いてしまいました。日々家に篭りきりのはずなのに、家事や学問、アルバイトで案外忙しい日々を過ごしています。生活の楽しみは食を除けば少なく、スーパーでは好みの魚が並んでいないか確認し、家では料理を盛り付けるのに何か楽しい食器が買えないかと窯元のサイトを漁るのが、淀んだ暮らしに淡い彩りを添えるばかりです。この記事では、第一志望のオックスフォードに提出した二種類のライティング・サンプルをどのように書いたか、実際に提出した文書とともに説明します。同時に、英文校閲に使用したオンライン・サービス「Scribbr」も紹介します。

ライティング・サンプルとは

 ライティング・サンプルとは、大学院が志願者の書く能力を測るのにしばしば用いるエッセイのことです。イギリスの修士課程に出願する場合、少なくとも社会科学分野においては、ライティング・サンプルを必ずしも出願先の分野に沿って書いたり、オリジナルな研究内容をアピールしたりする必要はないことが多いです。文量も一般的には1,500字〜2,000字と比較的短いです。思うに、イギリスの修士課程はアメリカのPh.D.課程と違って、研究者を養成することを第一の目的に掲げていないので、志願者の将来の研究能力を吟味する必要はあまりないのでしょう。ただし、イギリスの修士課程はコースワークを中心とするMScと研究に重点を置くMPhilの2種類があり、後者の場合はしばしばライティング・サンプルというよりも、研究計画書によって志願者の将来的な研究能力を評価することになります。ここでは、私が出願したオックスフォードのMSc in Migration Studiesの注意事項(HOW TO APPLYのセクション)を見てみましょう。

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画像1. MSc in Migration Studiesにおけるライティング・サンプルの注意事項

 要点は次の通りです。①ライティング・サンプルは2000語のものが2本必要で、②分野は必ずしも移民研究に関係している必要はなく、③議論や分析の能力を計測するのに使われます。オックスフォードの考えることは奇妙で、社会科学分野の内容でライティング・サンプルを書く必要がないのに、わざわざ2本も提出することを要求しています。私はケンブリッジとLSEにも出願しましたが、両校の場合はライティング・サンプルを1本だけ任意で提出することができました。

ライティング・サンプルを書く

 以上の点を踏まえると、ライティング・サンプルは出願において重要な役割を果たしているとは考えづらいです。そのため、私は出願を完了する最後のプロセスとして、ライティング・サンプルに取り掛かりました。時期としては10月上旬から下旬までの約3週間ほどで、この頃には奨学金の応募も一通り完了し、数ヶ月をかけて練ったケンブリッジ向けのリサーチ・プロポーザルも書き終えていたので、キャパシティには多少の余裕がありました。しかし、LSEは9月、オックスフォードとケンブリッジは10月に募集を開始してしまいます。そのため、特にローリング・アドミッション方式を採用しているLSEに関しては、出願が遅くなればなるほど合格の可能性が低くなってしまうこともあり、急いでライティング・サンプルを書き上げる必要がありました。

 私がライティング・サンプルを書く時に立てた一応の方針は、次の通りです。まず、1本目のライティング・サンプルでは(リンク先には実際に提出したファイルを掲載しています)、とにかく各大学院が自分に興味を持つことができるように、現在進行中のフィールドワークの内容を簡単にまとめました。志望動機書でも、自分は今フィールドワークをやっているので、ライティング・サンプルに詳細を記したと述べて、大学院のアドミッション・オフィスが目を通すように誘導しました。

 学部生が海外の大学院を受験する際に困ることの一つとして、出願時に卒論を書き終えていないため、ライティング・サンプルを学問的に多少なりともオリジナリティのある論考として書きづらい問題があります。私はたまたま埼玉県川口市の芝園団地で一年間の住み込み調査をしていましたが、団地で調査をしながら大学院出願の準備を進めていたので、いつの間にか膨大な量に達していたデータを一つの論考としてライティング・サンプルにまとめる余裕はありませんでした(し、卒業論文でまとめることにも失敗しました。イギリスに渡航する前に再びリサーチ・クエスチョンや理論的枠組みを立て直し、このデータに向き合いたいと考えています)。そこで、実際に提出したライティング・サンプルではとりあえず暫定的な問いを立てておき、先行研究の整理や方法論を形ばかりで記述したほかは、本文中の画像と付録のアンケートを中心に、調査で集めたデータをひたすら開示することに全力を傾けています。

 続いて、オックスフォードにのみ提出できる2本目では、自分のライティング能力を追加的にアピールするため、過去のレポートで評価が高かったものを英訳しました。4回生の前期に履修した社会学の特殊講義で優秀レポートに入選したものがあったので、英訳することにしました。元々日本語で3,000字だったレポートを、論理の流れを英語のアカデミック・ライティングに寄せる形で訳したところ、大体1,200字程度にしかならず、慌てて追加の文献を読んで文量を膨らませることになりした。私が日本語のレポートを英訳したのは、あくまで時間を節約するための苦肉の策としてであり、余裕のある方には最初から英語で書くことをお勧めします。日本語と英語とでは学術的な文章の構成が大きく異なるので、日本語のレポートを英訳すると、どうしても議論の骨格に矯正できない歪みが生じてしまいます。

英文校閲の味方: Scribbr

 英語でエッセイを書いた時に最も困るのは、ネイティブ・チェックです。幸いなことに私はネイティブ・スピーカーの友人に恵まれている方だと思いますが、大学院受験に必要な書類の量は膨大ですので、次第に周囲にばかり頼むわけにはいかなくなってきます。また、校閲を引き受けてくれた友人を急かすのは申し訳なくてできないので、私がライティング・サンプルを書いた時のように切羽詰まっている場合は、インターネット上の校閲サービスを利用するのも一つの手です。

 私が利用した校閲サービス、Scribbrを簡単にご紹介します。このサービスでは学術英語の校閲を広く手がけており、期末エッセイや大学院の志望動機書から、果ては博士論文まで取り扱っています。エディターは英語のネイティブ・スピーカーで、様々な分野を専攻していた人たちが揃っています。学歴は学士号と修士号が半々くらいの印象を受けました。

 Scribbrの使い方ですが、サイト上に校閲してほしい文書をアップロードすると、サービスの内容、所要期間を選ぶことができて、その内容と文書の語数に応じて料金を支払うことになります(画像2)。サービスは文章表現の校閲に始まり、文章の構造、明確性、引用の仕方、レイアウト、剽窃の有無を追加で確認してもらうことができます。所要期間は最長で1週間(私の場合は5日程度で返ってきました)、最短で24時間以内と迅速で、大変重宝しました。肝心の値段ですが、2000語のエッセイに追加のサービスを何点か付けて通常の日数で依頼した場合は約90ドル、同様の内容を24時間で依頼した場合は約120ドルでした。決して格安ではありませんが、急いでいる時には払うのもやむなしと思うこともあります。

画像2. 手元にある適当なファイルを試しにアップロードしてみる

必要なサービスを決めたあとは、文書の種類(例えばエッセイ)、学問分野、英語の地域(例えばアメリカ英語かイギリス英語か)などの条件を設定できます(画像3)。この情報に基づいて、適切なライターが割り当てられる仕組みになっているようです。

画像3. 情報の追記欄

 校閲のクオリティに関しても、学部生がイギリスの修士課程に出願する場合ならと留保を付ける必要はあるかもしれませんが、特に不満を覚えることはありませんでした。私が実際に1本目のライティング・サンプルを校閲に出した時の様子を、以下にご紹介します(画像4)。画像では上手く表示できませんが、画面右のコメント欄を開くと、内容に関する有意義な指摘が並んでいます。

  画像4. いつもどおりボコボコになって返ってきた我が子

 以上、ライティング・サンプルの概要、書き方と校閲サービスに関してご紹介しました。一応述べておきますが、私はScribbrから一銭も貰っていません。何かご質問があれば気軽にどうぞ!

クリーニングの済んだ財布を受け取った後、地元のドトールコーヒーにて

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