オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録④ 研究計画書

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 今岡哲哉です。大分間が空いてしまいました。更新を怠っている間に京都大学を卒業し、晴れて無職となりました。コロナウイルスの影響で卒業後の台湾への語学留学も中止することになり、肝心のイギリス留学も先行きが不透明になってきました。

 四回目となる今回の記事では、ケンブリッジ大学の社会学研究科に提出した書類をもとに、大学院生と比べて研究経験の浅い学部生がどのように研究計画書を書き上げたかを解説します。

研究計画書とは

 研究計画書とは、大学院で行いたい研究の内容を簡潔にまとめた書類のことです。私の場合、出願した三校(Oxford, Cambrige, LSE)のうち、ケンブリッジだけが独立した研究計画書を要求してきました。他の二校に関してはコースワークが中心のMScに出願したのに対し、ケンブリッジに関しては研究が中心のMPhilに出したことが影響しているでしょう。

 私が出願したケンブリッジ大学のMPhil in Sociologyでは、出願時に指導教員の希望を出すことが推奨されました。恐らく、大学が出願書類を審査する際には、出願者の指名に沿って個別の教員が研究計画書を見つつ、指導の可否を判断するのだろうと考えられます。それゆえ、研究計画書は合否を分ける上で最も重要な要素であるはずです。

 それでは、私が出願したケンブリッジ大学のMPhil in Sociology (Political and Economic Sociology) における要求を見てみましょう。大学のホームページを確認したところ、私の出願時とは若干条件が変わっていたので、当時の内容を掲載します。

  • Please upload a research proposal of around 1,000 words. Special formatting is not required.
  • A clear research question. Give a clear idea of the viability and importance of the research you propose.
  • Methodology by suggesting appropriate research methods.
  • Relevant academic literature (literature review) that describes the viability and importance of the research you propose. You may also want to mention your ability and interest in doing the work.

 簡単にまとめると、①1000語以内で、②リサーチ・クエスチョンと③方法論を提示し、④先行研究の整理をして、⑤自分の研究能力や関心をアピールしてもいいということになります。

学部生が書く難しさ

 しかし、いざ実際に研究計画書を書く段になると、多くの学部生は当惑することになります。大抵の場合はどこかで書き方を教わった経験もなく、研究計画の下地にすべき卒業論文も書き終えていないからです。

 私も出願した年の6月頃、研究計画書に着手しようとしたものの、どうすべきか全く分からず指導教員に泣きつくことになりました。そこから10月に到るまで、私が書くたび書くたび指導教員にみっちりとダメ出しをしてもらい、第6版になるまで改定を重ねました。正直、賽の河原で石を積み重ねているような心持ちになり、挫折しそうになりました。アフリカでのフィールドワーク中にも快く添削を重ねてくださった指導教員には、今でも感謝の気持ちと大切な研究時間を奪ってしまった罪悪感とでいっぱいです。

実際の作成手順

 具体的な作成の手順を説明します。まず、指導教員の候補をリストアップすることから始めましょう。本来は、教わりたい(複数の)研究者が特定の大学院にいることを予め知っていて、だからこそ出願するという方が順序としては正しいでしょう。ただし、社会学分野の学部生で英文のジャーナルを読みこなしている人はそう多くはないはずですし、私も研究計画書を作る際にはじめて集中的に英文のジャーナルを読むようになったので、以下の手順を提示しておきます。すなわち、大学のホームページで教員の一覧を見て、研究テーマが近そうな人がいた場合、その人の論文を何本か読みます。良い感触が得られた場合、その人の研究関心も意識しながら書くことにします。

 続いて、英文のジャーナルを読み漁ることにします。人類学者の指導教員が、私の研究関心を踏まえて、以下のジャーナルを取っ掛かりにするように勧めてくれました。雑誌論文は基本的に大学のデータベースで探すことができます。京大の場合、VPNを設定すると学外からデータベースにアクセスすることも可能になるので、非常に便利でした。

  • Ethnic and Racial Studies
  • The Journal of Asian Studies
  • Critical Asian Studies

 以上のジャーナルのうち、私の関心である(中国)移民に最も関連した論文が多かったのは、Ethnic and Racial Studiesでした。読んだ論文の参考文献から更に関連する論文を読み、同時にその論文を引用した論文にも当たることで(私の場合は京大のデータベースで確認しましたが、Google Scholarも使えます)、次第に特定のテーマに関する知識が広がり、無数にあるジャーナルの全体像も見えてきます。

私が他に読みあさったジャーナルは、移民研究に関連するものが多いです。

  • International Migration Review
  • International Migration
  • Journal of Migration and Integration
  • Journal of Ethnic and Migration Studies
  • The China Quarterly

 もう少し一般的なアプローチとしては、自分の専門分野の主要ジャーナルから入るのがよいでしょう。恐らく、こちらの方が安全です。社会学分野で言えば、こちらのリストにあるような主要ジャーナルを漁り、そこから関心のあるサブフィールドのジャーナルに移ればよいと思います。

 論文を読み重ねるうちに、次第に自分の研究関心が明確になってきます。私の場合、五十本くらい読んだ段階で着想が固まりました。一日一本読めば、二ヶ月足らずで方向が見えることになります。そこからは次の構成に沿って書きました。

  • 研究テーマ
  • 問題の所在
  • リサーチ・クエスチョン
  • 調査の狙い
  • 方法論
  • 先行研究
  • 仮説
  • 予想される研究成果
  • 参考文献

 内容はお粗末なので詳説を省きますが、関心のある方は適宜ご覧になってください。一応概要を述べます。近年は移民の選別が進み、大卒以上の高度人材移民が能力の高さを理由にもてはやされるようになりました。彼らは受入先の社会で社会的に統合されやすいとされているけれども、本当にそんなうまい話があるのだろうかというものです。自分の芝園団地における研究経験を盛り込み、日英で中国人移民に対する聞き取り調査を行い、比較によって先ほどの通説を検証すると書いています。

 二点ほど追記します。まず、言語に関してですが、最初に日本語で書いて最後に英訳しました。最初から英語で書く自信が無かったことに加えて、校閲をかけていない英語では正しく指導教員に内容を伝達できない恐れがあったので、日本語で書くことにしました。ネイティブ・チェックは友人にお願いしました。続いて、文献の並べ方ですが、特定のスタイルを採用して厳密に従うようにしましょう。学科の先生の言葉を拝借すると、「形式がデタラメなヤツは内容もデタラメ」だと思われてしまいかねません。私は和文でレポートを書く際には日本社会学会の「社会学評論スタイルガイド」に従っていますが、研究計画書は海外でも通じやすいAPAにしました。

 以上です。質問や指摘などがあれば、コメント欄にお願いします。

 

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