オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録② 志望校の選定基準・出願のスケジュール

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 今岡哲哉です。イギリス大学院受験記の第2回では、志望校の選定基準と出願のスケジュールをお伝えします。

 まず、志望校の選定についてです。私は入学時から海外の大学院に進学したいとぼんやり考えていましたが、実際に大学院のホームページを渉猟するようになったのは、社会学専修に配属された3年前期のことでした。その段階で実際に出願した大学院のホームページには一通り目を通していて、とりわけOxfordのMSc in Migration Studiesに強い関心を抱いたことは間違いありません。ですが、最終的に出願校を決めたのは、イギリスの大学院教育の仕組みや在籍している教員による研究内容、日本の先生方に伺った各校の情報を総合的に勘案してからのことで、時期的には3年から4年の間の春休み、つまり2019年2-4月のことでした。出願先として、Oxford、Cambridge、LSEに加えて、教員に勧めてもらったBristolを選びました(が、上記3校の出願を終えて一息付いたところでLSEに合格したので、結局出願しませんでした)。

 ただし、OxfordとCambridgeのどちらを第一志望にするかに関しては、4年の夏頃まで揺れていました。その理由は教育システムの違いにあります。イギリスにおける社会科学の修士課程は、MSc (Master of Science, Taught degreeと呼ばれることもあります)とMPhil (Master of Philosophy, Research degreeと呼ばれることもあります)の2種類に大分できます。前者ではコースワークの履修が中心的で、研究は副次的なものになります。一方、後者では主体的に研究することが奨励される反面、コースワークの充実度は後退します。なお、MPhilからDPhil (博士課程)に進む方が、MScから進むよりもスムーズに接続できるようです。こうした事情から、一般的にMPhilの方がMScよりも入学の難易度は高いのではないでしょうか。例えば、2017-18年度におけるOxfordのMSc in SociologyとCambridgeのMPhil in Sociologyの出願状況を比較すると、必ずしも制度上の違いのみに理由を還元することは難しいものの、やはり後者の人気が高いことが伺えます(表1)[注1]。

表1. Oxford (MSc in Sociology)とCambridge (MPhil in Sociology)の比較 (2017-18年度)

 以上の事情に加えて、私も至らないなりにフィールドワークをしていたこともあり、教員と密接に関わりながら調査できるCambridgeのMPhil in Sociologyには魅力を感じていました。ですが、私は移民研究の理論に対する知識が不足しており、まだ自力で調査を設計すべき段階ではないこと、そしてCambridgeには私の主たる関心である中国を研究テーマに据えている教員が一人も居ないことに鑑みて、OxfordのMSc in Migration Studiesを第一志望に決めました。

 第3志望のLSE (MSc in Sociology)を選んだ理由は、教員の層が非常に厚く、コースワークも非常に充実していたためです。こちらのクラス一覧が参考になるかと思いますが、社会学の理論、トピック、調査法をここまで網羅的に取り扱っている大学院は、イギリスにおいてはLSEの他にないと思います。Oxfordで研究休暇を送った先生にお話を伺った際に、「Oxfordの社会学は計量が中心的で、LSEの方が理論的な話をできる人が多かった」と仰っていたこともあり、Oxfordの社会学にも出願しようかと考えていたのを改めて[注2]、LSEに出願することにしました。

表2. 各校の出願状況

 スケジュールに話を移しましょう。表2には各校の募集開始日・締切日と審査方式、そして私の出願日・合格日がまとめてあります。いずれの学校も2019年9月に募集が始まり、私は同年11月に出願を終えて、同年12月-翌年2月にかけて合格通知が届きました。

 注意すべきことを述べます。審査方式についてですが、OxfordとCambridgeはラウンド方式、LSEはローリング・アドミッション方式を採用しています。つまり、出願者の選考に際して、ラウンド方式では大学院が(複数の)期日を設けてその日までに集まった願書を一斉に審査するのに対し、ローリング・アドミッション方式では出願者が書類を提出した順に審査が始まります。この選考方法の違いは締切日にも反映されており、OxfordとCambridgeには複数の締切がある一方、LSEは随時審査となっています。ただし、各校ともに学内奨学金の選考対象になるための期日があるので、早めの出願が大事であることは間違いありません。

表3. 各校の要求書類

 表3には各校が要求した書類を整理しました。各校が共通で必要とする書類は、成績証明・語学試験・CV・推薦状・ライティングサンプルです。加えて、OxfordとLSEが志望動機書を要求する一方、Cambridgeは1,000語の研究計画書を求めてきました。この違いは前者がMSc、後者がMPhilであることに基づいているものと考えられます。こうした書類を準備に費やした時間・労力・金銭に沿って並べると、

  • 研究計画書
  • 語学試験
  • ライティング・サンプル
  • 推薦状
  • 志望動機書
  • CV (履歴書)

の順番になります。

 また、イギリスの大学院では留学生が外部奨学金を調達していることは実質上の必須条件であり、願書の作成や面接に多大な時間と労力を費やすこととなりました。おそらく1番目と2番目との中間くらいの時間は費やしたのではないでしょうか。

表4. 出願スケジュール (見にくくてすみません)

 以上の必要書類のうち、大学の窓口に申請して受け取るだけの成績証明書[注3]を除いたものに関して、作業のスケジュールを表4にまとめました。大まかに述べると、3年生の終わりである2019年3月にIELTSを受験したのが出願作業の始まりで、4年生になった同年6月から推薦状の依頼や研究計画書の作成を進め、夏休みには外部奨学金に応募し、11月中には残る志望動機書・CVの作成を済ませて出願を終えました。ただし語学試験だけは、出願時に大学院の要求スコアを満たしている必要はないことから後回しになってしまい、結局Oxfordの入学に必要なスコアを取得できたのは2020年2月になってしまいました。

 ちなみに、私はイギリスの大学院留学では有名なエージェントの一つに登録していましたが、結局は全て独力で出願しました。その理由ですが、エージェントが出願を代行できるのは認可を受けている大学院に対してのみであり、私の志望校はいずれもエージェントを認めていなかったためです。私の志望校ではインターネット上で簡単に書類を提出できるため、エージェントの助けがなくて特に困ることはありませんでした。自戒を込めて言いますが、出願作業が独力で出来ないのに英語圏の大学院に行こうと考えるのは、辛うじて掴まり立ちできる幼児が補助輪なしの自転車に乗るくらい無謀なことです。また、エージェントのサービスも3万円という値段相応のもので、志望動機書やCVを1度だけ添削してはくれましたが、出願に関するメールでの問合せには数日間返答がないこともしばしばあり、その内容も自分で調べれば分かる範囲を超えたものではありませんでした。さらに、OxfordやCambridge, LSEなどのいわゆる難関校に出願するには30万円ほどの追加サービスに登録する必要があるとのことで、エージェントのポータルサイトで閲覧できる過去の出願書類のデータベースからも、以上の大学院に関するものは省かれていました。エージェントがこうした仕事をするのは収益化の観点から当然のことですが、私は大学に通っている人なら誰しも——自分のように特段裕福ではない家庭の出身でも——努力の暁には大学院留学のチャンスを掴める社会であってほしいと強く願っているので、もろもろの書類を赤裸々に晒してゆきたいと考えています。

 少し長くなってしまいましたので、出願作業の具体的なプロセスを解説するのは次回以降になります。気長にお付き合いください。

 ピーチ・エアの台北→成田便、足元が広い非常席13列目のシートにて


[注1]OxfordCambridgeでは、それぞれ入試に関するデータを毎年公表しています。

[注2]Oxfordでは同一年度であっても複数のコースに同時出願することができます。

[注3]京大には証明書発行機があり、和文の成績証明書ならいつでも発行することができます。ですが、英文やGPA記載の成績証明書を発行する場合、教務課に申請書類を提出して数日間待機しなければならず、埼玉でフィールドワークをしていた私は大変不便な思いをしました。京大には学生意見箱という申立てシステムがあるので、以上の不便を改善するように大学に要求しましたが、要領を得ない返答しか帰ってきませんでした。

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