オックスフォード・ケンブリッジ・LSE修士課程(社会学・人類学分野)の出願記録① 自己紹介・出願の経緯

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はじめに

 私は京都大学文学部4回生で社会学を専攻している今岡哲哉です。2020年秋からOxfordのMSc in Migration Studiesに進学予定です。今月から来月にかけて、大学院受験の記録を何本かの記事に分けて公開してゆきたいと考えています。

 ブログに投稿する一番の目的は、私の出願記録を公開することで、なるべく多くの方の参考にしてもらうことにあります。大学院留学の実現に至るまで、私が直面した情報不足は大きく分けて3点ありました。すなわち、①学部生が、②社会学・人類学分野において、③イギリス難関校の修士課程に留学するケースは、直接会ったことのある方とインターネット上で情報を公開している方との双方を含めても、私は2件しか知りませんでした。

初回の本記事では、自己紹介とイギリス大学院受験に至った経緯・出願結果を記載します。

自己紹介

 冒頭の一文以上に言うべきこともありませんが、もう少し自分のことを述べます。地元は千葉県で、趣味は読書と旅行です。好きな作家は川端康成で、旅行先は中国になることが多いです。専攻している社会学では、移民の社会的統合・中国人移民全般を主たる関心に据えていて、主な手法は聞き取りをはじめとする質的調査です (本当のことを言うと、時間割の都合で量的調査の手法を学びそこねてしまいました)。3回生の時には、同じ専攻の友人2名と「国際移動研究会」というグループを立ち上げて、京大のプレゼンコンペ「SPEC」に入賞して約50万円弱の費用を調達しました。その資金を用いて、埼玉県川口市芝園団地で一年にわたる断続的な住み込み調査を行いました。芝園団地では、中国をはじめとする外国籍の保持者が住民の半数以上を占めているとされ、日本人住民と外国人住民との共生に様々な課題があります。ここでの調査結果を、京都大学・ソウル大学・台湾大学で共催している社会学ジュニアワークショップで発表したり、グループのメンバーとスピーチコンテストに出場したりする形で発信してきました。

芝園団地

 

 もろもろの数値が気になる方もいるかと思うので、もっと機械的な自己紹介をします。

 GPA: 3.80 (出願時3.75) / 4.30  

専門科目GPA: 4.04 (たしか出願時4.00) / 4.30

IELTS: Overall 8.0 (R: 8.5 L 8:5 W 7.0 S 7.0)

大学院留学を志した経緯

 簡単に述べてしまうと、①日本とは異なる英語圏の移民研究に触れてみたかったから、②仮にも「社会」を冠に頂く学問を修めている以上、様々な「社会」から来た学生と机を並べてみたかったから、 の2点に尽きると思います。

 こうした点において、OxfordのMSc in Migration Studiesに強く惹かれるようになりました。人類学部・国際開発学部が共同で設置しているこの修士課程では、学内にある世界的な移民研究センター・COMPASの協力によって、数多くの移民研究者から最先端の理論・知識を学ぶことができます(実態はまだ知りません)。第一志望として選ぶ決定打となったのは、かねがね教わりたいと思っていた中国移民の専門家がこのコースでディレクターを務めていることでした。世界中から留学生が集まっていることも想像に難くありませんでした。

 このコースに進学する場合、2つの賭けに出ることになります。まず、アメリカに進学しない選択をすることです。現在、社会学に限らず多くの学問で共通のことだと思いますが、優れた大学院教育のプログラムはアメリカに集中しています。前章でも軽く触れた社会学ジュニアワークショップで知り合った、ソウル大学や台湾大学の先生方には、コロンビアやハーバードをはじめとする、アメリカのトップスクールでPhDを取得した先生が少なからずいらっしゃいましたが、異口同音にアメリカの大学院教育の質が高いとおっしゃっていました。ある先生は、イギリスのコースワークは全然体系的ではないので、アメリカに行った方がいいのではないかと、私にアドバイスしてくださいました。

 それでも私がアメリカを選ばない理由の一つには、学部生がトップスクールのPhD課程に受かるのは不可能に近いという厳然たる事実があります。社会科学分野でアメリカのトップスクールに留学する非英語圏の学生は、基本的に自国で修士課程を終了してからアメリカに留学します。その背景には、アメリカのPhD課程が誇る高いレピュテーションと、授業料免除かつ生活費支給という高待遇が考えられるでしょう。インターネットで拝見した社会学の事例では、東京大学からBrownに留学された木原盾さん、同じく東京大学からWisconsin Madison→Princetonに留学された打越文弥さんのご両名を挙げておきます(お二人は非常に参考になる出願体験記をブログに載せていらっしゃいます)。

 私はせっかちな人間なので、学部からそのまま海外に出てしまいたくなり、イギリスに行くことにしました。同時に、アメリカでは修士課程と博士課程が一体化して5年間のPhDプログラムになっているのに対し、イギリスでは修士課程と博士課程が別々になっているため、学部卒と修士卒がアドミッションの課程で競い合う確率は低く、なおかつ修士を終えた段階で進路を見つめ直すこともできると考えました。複雑怪奇な試験であるGREをやらなくていいのもイギリスの魅力です。

FAQコーナーでGREへの敵意を覗かせるCambridgeのDepartment of Sociology

 もう一つの賭けは、学際的なコースに進むことです。移民研究は非常に学際的な分野で、地理学・政治学・社会学・人類学・経済学を中心とする社会科学の研究者が、それぞれのアプローチによって研究の発展に寄与してきました。したがって、移民研究を学ぶことは本質的に学際的なことだと私は信じているのですが、まだ社会学に片足を突っ込んだばかりの私が「学際」などと言ってみたところで、立脚すべき知的な土台がないのではないか、という懸念はあります。ですが、全ての行動にリスクは伴うわけで、入学するまで結果は分かりません。

出願先一覧

 私が出願したのは3校で、いずれもイギリスではよく知られています。移民研究を専門にしたコースはオックスフォード以外眼中になかったので、残りの2校は社会学のコースに応募しました。全て不合格になる可能性も多分にありましたが、自分でも驚いたことに全て合格しました。

 以下、出願先を記します。

 第一志望: Oxford, MSc in Migration Studies

 第二志望: Cambridge, MPhil in Sociology (Political and Economic Sociology)

 第三志望: LSE, MSc in Sociology

今後の方針

 脳裏によぎったことをツラツラと書いているので定まった方針はないのですが、出願スケジュールや奨学金、語学試験、出願書類の作成など、一通りの事柄はカバーしようと思っています。公開できる範囲で実際に提出した書類をバンバン出してゆくつもりなので、ぜひご期待ください。特に社会学専攻の方には、学部でこの程度のものが書ければ受かるのか、という安堵の材料になるかと思います。

 ベトナム・フエの安宿からお送りしました。

 

 

 

 

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